目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第40話

 ダンジョンの探索は順調である。

 というか不人気という事もあり、人がいないから周囲を気にせず暴れることができるし気配察知も楽だ。

 私の開発した魔法で、まだ世間に発表していないものがありサーチとソナーというのがある。

 サーチは敵味方と不明な戦力を把握したうえで脳内に位置を表示して、敵は赤、味方は青、不明な奴らは黄色で示してくれる。


 ソナーは、まぁマッピング魔法だな。

 この二つの組み合わせでダンジョンの構造を把握して、敵の位置も把握する。

 途中で隠し通路などがあれば塞いでも問題ないというのは本当に助かるわ……普通のダンジョンだと誰かを意図的に閉じ込めたと思われて一発で敵認定されるからな。


「なんか、思ったより弱いですねこいつら」


「お前が強すぎるんだよ。というかなんでここまで迷わない」


 司は周囲を警戒しながらも、ずんずんと進んでいった。

 罠があれば指摘しようと思ったが、その手前でピタリと足を止めてこちらに視線を送ってきたほどである。


「ユキさんがやってるのを真似たんです。魔力を波のように薄く細かく散らして次の階層までの道のりを調べました」


 先生と田中が私と司を交互に見るが……この場合おかしいのは司だ。


「お前……その魔法私が完成させるまでどれだけかかったか……いやいい、それ使い方によっては危ないから人前じゃ使うなよ?」


「でしょうね。知らない魔法でしたし、悪用できそうだ」


 笑顔を作ってみせるが、胡散臭いなぁ。

 この魔法の便利なところは脳内でマッピングできるから、一人使える奴がいれば道に迷わないという事。

 エルフの森なんかは人が立ち入らないように迷宮魔法と言われる、まぁ普通に方向感覚を見失わせる魔法を使っているのだがそんなところでも平然と抜けられてしまう。

 そして一番の問題は、この魔法を使えば王族や貴族の屋敷にある抜け道とかも全部わかってしまうという事だ。


 公にするには危険すぎたから封印していると言ってもいい。

 というか普通魔法使ってもこういう地味なのに気づく奴はいないんだがな……先生なんかは顕著だが、魔法系ジョブでも魔力を放出しても気付かない事が多い。

 事実今まで私と司の探査魔法に気付いていなかった様子だし、そもそも司の魔法に私も気付いていなかった。

 戦士とかよりも魔術師とかの方が魔力には敏感だというのに、それを気付かせないってどんな技量だよ……私より上じゃねえか。


「でも、本当に悪用できそうだ……随分危険なもの考えましたね」


「便利な物ってのは大体想定外の使われ方をするからな。その想定外をも想定して、発表していない」


「なるほど、想定外を想定……」


 何やら感が始めた司だが、すぐに正面を向いて歩きだした。

 何かしらの気付きがあったのか?

 それを私が知ることは無いが、何かの助けになればいいな。


「あぁ、そうだ。この階層には魔族はいないみたいですね」


「そうだ……な?」


「いえ、気配察知の応用なんですがこちらに敵意を向けているのは魔獣だけでしたし。なにより魔獣達の意識が僕たちだけに向いていたので」


 ……サラッととんでもない事をしやがる。

 いや、実際その通りなんだけどさ。

 一般的に探査魔法に限らず魔力の放出に一番敏感なのは魔獣だ。

 それでも積極的に襲ってくることは無く、こちらを警戒するにとどめるのが普通なのだが魔族も同等以上の察知能力を備えていることがある。


 サキュバスなんかはマジで敏感で、隣の国でデカい魔術実験やったなーという、人間の実験レベルの魔力まで察知できる。

 一方でそれが糞苦手な奴らもいるから一概には言えないんだけどな。


「いたとしても気付いてない可能性もあるから油断はするなよ」


「わかりました。でも……」


 ザクリと、壁を伝ってきた魔獣を刀で突きさしてから司が笑う。


「まだ想定外には至ってないですね」


「そうか……」


 何を考えているのかわからないってのは、こんなに厄介なんだなぁ……。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?