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第42話

「……見つけました。所属不明の相手です」


「こっちも見つけた。だがこいつは……」


 魔族と思しき反応が引っかかった。

 だがそこから得られた情報は二つ、まず魔族は3組で1人が死にかけていること。

 もう一つは、その魔族達は魔獣に囲まれて大ピンチという事だ。


「どうします。見捨てますか」


「ダメです!」


 司の提案に先生が反対する。

 私としては迷うところだが、ここで話し合う時間も勿体ない。


「多数決を取る。救助に向かうか、見捨てるか。私はお前たちの意向を支持するから棄権票だ」


「様子見したいところっすけど、情報も欲しいしサキュバスのお姉さんたちみたいに話が通じる可能性も信じたいっすね。最悪ユキさんに丸投げすることになっても接触したいっす」


 田中……相変わらずしたたかだなお前。

 まぁいざとなれば私の出番だし、司も躊躇することは無いだろうから問題ない。

 先生は聞くまでもなく田中に同意しつつ、できる限り助けたいと考えているようだ。

 甘い考えだと思うが、それが自然なんだろうな……私もこの世界に慣れ過ぎた。

 つーか前世よりもこっちでの生活の方が何倍も長いからな!


「なら決まりですね。急いだほうがよさそうですしユキさん先頭をお願いできますか?」


「仕方ないな……【サモン:ビーストナイト】【サモン:ゴースト】」


 発動したのは召喚魔術、召喚士というジョブが使える魔術であり基本的には魔獣を模した存在を魔力で作り上げる魔術だ。

 一応魔術書にも載っているのだが、召喚士以外は魔力の消費が多すぎて大した魔獣は召喚できない。

 ただ私の場合究明者のジョブの補正もあってその消費が低くなっており、よほどの大物以外なら何とかなるので消費が少なく数が多いビーストナイトを召喚。


 これは低階層にいた人型狼とかそういうのと同じ分類だが、ジャンルが幅広いのでまとめてそう呼称されている。

 人型猫とかもいるし、ミノタウロスもこの分類だからな。

 もう一方のゴーストはネクロマンサーが得意とする召喚魔術だが、文字通り幽霊の召喚だ。

 こっちは、実は召喚士とは違って本物の幽霊を呼び出して使役するわけだがダンジョンは比較的簡単に召喚できるんだよなぁ。


 それだけ人が死んでるって事でもあるんだが、ゴースト見て怯えてる先生には言わない方がいいだろう。


「行け、魔族以外は殲滅して構わん」


 命令を出せば即座にビーストナイトたちとゴーストが動く。

 物理的な戦闘と索敵に優れたビーストナイトが敵を屠り、相手の能力を下げる、いわゆるデバフや状態異常で厄介な敵を翻弄するゴースト。

 この組み合わせは割と反則気味で、格上相手でも戦えるから召喚士やネクロマンサーは重宝されることが多い。


 ……まぁハルファ聖教ではネクロマンサーは禁忌ってされてるけど、それは知ったこっちゃない。


「よし、司は2人の面倒見ながらゆっくり追いかけてきてくれ」


「わかりました。索敵は続けます」


「常に続けろ」


 気を抜くような場面じゃねえんだよなぁ……つーかダンジョンで油断するなよ、絶対に。



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