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第43話

 数分後、数体のビーストナイトを連れて魔族の所に辿り着いた。

 何体かは残して敵の殲滅に当たらせているが、どうやら間に合ったらしい。

 想像通りアラクネと動物型の魔族、人狼だな。

 倒れているのは……見たことないタイプの魔族だな。

 青い肌に立派なツノが目立つがそれだけだ。


「ポーションだ、飲ませるか傷口にかけろ」


「お前は……」


「話は後だ。まず魔獣を駆除するからお前らは怪我人の手当てに専念しろ」


「無茶だ! そいつらは……」


 人狼が口を開くと同時に飛来する無数のムカデ。

 毒持ちで、虫型というだけあってしぶとく頑丈、炎に弱いがこんな閉所では使えないから面倒な相手だが……。


「【アイシクルガーデン】」


 戦術級魔術、範囲は任意だが馬鹿みたいに魔力を使う凍り属性のそれは範囲内の敵をすべて凍結させる。

 格上相手だと魔力差でレジストされて涼しいくらいだろうけれど、この程度の魔獣なら血の一滴まで凍り付いて死ぬ。

 あとはビーストナイト達が着るなりぶん殴るなりして粉々にすれば終わりだ。


「見せてみろ、毒はくらっているか」


「え、あ、いや毒は受けていないがムカデの爪で切られた」


「そうか……ポーションの効きが悪いな。そういう種か? 今まで見た事の無い魔族だが」


「俺達を魔族とわかって助けるのか?」


「うちのパーティにいる聖女様のご意向でな」


 そう口にした瞬間、人狼とアラクネがこちらに殺意を向けてきた。

 牙をむいて、爪を構える人狼。

 鎌状の手を振り上げ尻を向けてくるアラクネ。

 共に最上級の警戒態勢だ。


「聖女という事は勇者一行だな」


「情報が早いな、その通りだ。とはいえ殺すつもりもないし、尋問しようとも考えていない」


「アラン……」


「嘘をついている様子はない……が、エルフの匂いは元々希薄だからわかりにくい」


「そういや人狼は体臭で嘘を見抜けるって話だったな」


「こちらの事をよく知っているようだ……エルフ? 勇者一行で……まさか!」


「どうしたミスト!」


「過去、魔王様が何度も相手をしたハイエルフがいる……名前はユキ、毎回勇者と共に現れては魔王様を眠らせている人類側の英雄の一人だ」


「そんな風に言われてたのか。私は魔王が起きるたびに文明がぶっ壊されて研究対象が消えるのが嫌だから邪魔してただけなんだがな……」


 いや、マジで国ひとつとかそういうレベルじゃなくて大陸丸ごと焼き払われることもあるからな。

 それが嫌で魔王討伐の度に同行することはあったけど、本格的に名が知られたのは初めて勇者という存在が魔王討伐に行くからついてきてくれって声かけてきた時だ。

 あの時は……あぁ、まだ森にいたっけ。

 外に出るいい機会だからと承諾したのが始まりだ。


「お前は……っ! 備えろミスト! まだ来る!」


「あぁ、大丈夫だ。お前らが敵意おさえてれば勇者が切りかかって来るような事は……っておい、状況くらい確認しろよ司」


 飛んできた魔法をはじく。

 ……常設型の防御魔法を展開していたんだが腕が痺れた。

 あいつどんどん強くなってるな、そろそろ手に負えないぞ?


「すみません、反応が敵対になっていたので」


「だからと言っていきなり攻撃するな。先生と田中は話し合うって決めたんだし、私だってそれに賛成した。個人で動いて状況を悪化させるような奴は化け物呼びされ続けるぞ」


「……気をつけます」


 うーむ、やっぱりそういう扱いを受けるのは嫌みたいだな。

 余り連呼すると後ろから刺されそうだが、こういう時の説教には使えるか?

 まぁ使いどころを間違えないようにしよう。


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