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第65話

「ここがダンジョンの内部、ですか?」


「あぁ、もしかしたら道中ずっとそうだったのかもしれん」


 一直線にここまで来られた。

 それが審査だった可能性もありうる。

 というかそういう事にしておきたい。

 アルファが作ったダンジョンの一種だけど、資格が必要なタイプのものがある。

 例えば一定以上の魔法が使えなければ通れないように作られた通路とかだな。

 基準に満たないとダンジョンから追い出されるので、そこは今魔術師ギルドの連中の総本山となっている。


 毎年魔術学校と魔法学校のどっちに進むべきかの振り分けが行われるのだ。

 ノービスでも魔法の行使は才能の領域だからな。

 そして貴族の中にはノービスであることに誇りを持っている連中もいるから。

 それはさておき……ここに来る資格があると認められたから私は迷うことなく一直線に来ることができたのではないかと仮説を立ててみる。

 そもそも塔も神のダンジョン踏破者前提という条件があるからな。

 その辺の縛りが一番緩いのは闘技場だろうけど、あれは人気すぎて待ち時間の方が長い。

 司達は黒龍王に乗っていったからその日のうちに到着しただろうけど、一般の申し込みをしたら半年待ちとかになっていたんじゃないかね。


 リリのごり押しでも半月くらいは待たなければいけない。

 まぁ、闘技場は近くに他のダンジョンがあるから予定が決まればそっちで訓練すればいいだけなんだがな。

 あとは常に所在不明と言われている城だが、あれも資格があれば適当に歩いていても辿り着けるようになっているんじゃないかな。

 神殿は知らん、何がトリガーなのか皆目見当もつかない。


「どう、しましょう」


「私から離れるな。それだけを徹底しろ」


「はっ!」


 全員がその場で敬礼をする。

 さて、どうしたものか……この洋館に足を踏み入れるか、それとも野営をするか。

 呼ばれたのが私だけなら、もしかしたら野営の最中にこいつらがはじき出される可能性がある。

 けど本体……というか、ダンジョンコア的なこの洋館の中に入ってしまうとそれも無くなりそうな予感がする。

 つまるところ今夜一晩、ここで過ごせば近衛達の安全確保が可能かどうかの確認ができる。

 一方で夜襲の可能性、人はいないとはいえ魔獣がどんなふうに出てくるかもわからないため、いっそ建物の中にという考えもないわけではないが……。


「野営を継続、薪などは集めず魔道具で代用する。食料は持参品のみだがいいな。便所は全員の目の届くところに造る。互いの顔とこの場にいる人数を常に数えておけ」


「了解いたしました!」


 再びの敬礼。

 さて、神のダンジョン……もとい神、想像以上に手荒い歓迎をかましてくれたわけだが、お手並み拝見だな。


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