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第73話

 結局その後アルファは私に化けて闘技場に行くことになった。

 管理者としては駆け出しのアルファだが、その戦闘力は私以上。

 如何せんジョブの傾向が同じだったからわかるが、あいつの言っていた通り年季が違う。

 私達のジョブの本質は相手の事を理解し、その能力を得られるという物。

 間違いなく私より多くの相手を見てきて、そして理解してきたあいつの能力は私以上だろう。

 更に今回私に化けた際記憶を得たことで今までにない力も得た可能性が高い。


 ……正直、反則もいい所だよな。

 私が必死こいて近くで研究して究明した色々なジョブ、対してあいつは相手に化けるだけでそのジョブの全部を把握することができる。

 相性の問題があると言っていたが、単純に苦手意識とかそういう面であり今のアルファなら化けられない相手はいないだろう。

 つまるところ、面識さえあれば大抵の相手のジョブをコピーしたうえで能力値の上乗せまでされるわけだ。

 一応他人の記憶を連続してコピーし続けると自我が崩壊しかねないという欠点はあるらしいが、あいつ一定周期で無限に復活するからな……世界崩壊が関わってなければ問題なんか無かっただろう。

 あと管理者になった今なら世界が崩壊した程度じゃ死にはしないだろし、最悪の場合の話をすれば神がこの世界をリセットする。

 強さそのままにあの放送の直後までさかのぼることができるわけだ。

 強くてニューゲームという奴に近いが……どちらにせよ反則もいい所だよな。


「さて、そろそろ私も行くか。管理者権限実行、神のダンジョン城の攻略」


 宣言すると同時に眼前に階段が現れた。

 それは空の上、蜘蛛の向こう側までつながっている。

 どこからか、巨大な雲が上空に現れそこに繋がっているように見える。

 ……天空の城ってやつか?

 確かに神っぽいけどさ、演出過多というか……ファンタジー要素辛うじて残してる程度でしかないよな。

 アカシックレコードに監視所ときてこの演出。

 ゲームやってる時にメタな話をNPCがしてくるような気分だ。

 ホラゲーだとそれも一興なんだがなぁ……。


「というか階段長いよなぁ」


 空の上まで続いているのだから当然と言えば当然なのだが……うん、滅茶苦茶長い。

 そして見た目優先なのか手すりもついてないから少し登っただけでも超怖い。

 既に神殿の高さを超えているのだが、この時点で横風で落ちそうになる事数回。

 今は両手でがっしり階段を掴んで這うようにして登っている。

 ファンタジーな優雅さとか見た目しかねえよこれ!

 落ちたら死ぬわ!


 ドライブ使って飛べばいいとか考えたけど発動しなかったよ畜生!

 飛行魔法とかでどうにかって考えたけど、さっきアルファ蹴っ飛ばした時想像以上に能力あがってたせいで制御が上手くいくかどうか怪しいし……。

 あの魔法、死ぬほど繊細な魔力操作を要求されるからなぁ。

 過去に習得しようとした奴の大半が大気圏突き抜けて星になったり、着地ミスってひき肉になったり、明後日の咆哮にすっ飛んで行ってどっかにぶつかって潰れたトマトになったからな。

 今の私がやったら間違いなくお星さまコースだ。

 地面や壁にぶつかっても無事だろうけど犠牲者が出そうだなと思って自重している。


 重力に関する魔法と、風の魔法と防寒のために炎の魔法を同時展開して飛行と風の影響を避けながら任意の咆哮に一定速度で進むっていうもんだからどれ一つ間違えても死ぬ可能性が高いしな……。

 大抵の奴は重力魔法ミスって死ぬんだが、私の場合炎の魔法ミスったら消し炭になるし、風の魔法ミスってコマ切れになる可能性もあるから今の状態だと怖くて絶対に使えない。

 つーか炎の魔法なんか魔力量と魔力操作次第で青天井に火力が増していくから、下手したら地上に恒星並みの熱量出現させて惑星諸共焦土にしかねないから魔法は全部封印して魔術をメインにした方がいいかもしれんなぁ……。


「……いや、でも寒いわ!」


 どんどん高度あがって現在雲まであと数百メートルと言った所。

 横殴りの風が酷くて絶対に立っていられないだろうし、途中インベントリから取り出した外套を着ているのにクッソ寒い。

 風船で海を横断しようとした人がいたけど、その人も寒さを訴えてたらしいからなぁ……。

 というかこれからあの雲の中に入るんだろ?

 曇って水蒸気の塊だし、もっと冷えるんじゃないか?

 ……防寒着、もう1着だそう。

 あと防寒の魔道具……つーか最初からこれ出しておけばよかった!


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