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第87話

「驚いた。まさか創造をしてしまうとはね」


「タネさえわかっちまえばこんなもんだろ」


 うん、声帯も造り直せた。

 神経……まだ少し違和感はあるが問題なさそうだな。

 ただ少し細胞が難しいが……ちらほら癌細胞が出てきやがる。


「まったく、お前何を望んでるんだ?」


「ん? どういう事かな? 僕は純粋に楽しんでいるだけだけど?」


「はっ、よく言うよ。散々ヒント出して、ギリギリのところで気付かせやがって」


 誘導された、そう思わざるを得ない。

 そもそも殺すつもりならもっと簡単にできたはずだ。

 それこそ管理者になる前に殺せたし、この世界への転生を認めなければそれで終わっていた。

 更に言うなら管理者にしたてたかったんだとしても回りくどいというか、こちらを煽るばかりで攻撃はおざなり。

 さっきの電気だってこいつからしたらお遊びにもならないだろう。


「それは今教えるべき事じゃないなぁ」


「実質導線引いてるって答えてるようなもんだなぁ!」


 破壊者、あらゆる物質を破壊できるユニークジョブ。

 その解析の、更に先を進める。

 進化したジョブ、破壊王、そしてまだ解明できていない破壊神。

 流石に神のジョブになると解析にも時間はかかるが、このジョブは解明しておくべきだという直感から続けることにしておく。

 だが今は王の力だけでも十分だ。

 破壊王のジョブ、その真価は破壊という概念を物質のみならず事象にも発生させることができる。

 つまりは、こいつがここに現れたという事象にも干渉できる。


「おっと、それは流石に危ないな」


 ひらりひらりと避けられるがそれでいい、効果があるとわかったのなら十分だ。


「召喚! ホワイトドラゴン!」


 カードマスター、召喚士によく似たジョブだがモンスターや精霊と言った存在との契約が必要ない特殊なジョブだ。

 その進化系はカードキング。

 彼の様子からは既存の魔獣市価償還できていなかったが、イメージができるなら大抵のものは召喚できるようになった進化系ユニークジョブだ。

 そしてそれは生物に限らず、食料や水、回復薬なんかも適用されるが……今はいらないな。


「追い込め!」


 私の命令にドラゴンが咆哮を上げて神の分霊に飛びかかるが一瞬でかき消される。

 想像上の生物であり、転生前にちらっと見たアニメに出てきたキャラクターだから私のイメージ力不足もあるだろう。

 けれどその一瞬が欲しかった。


「クリエイト!」


 マスタークリエイター、あらゆる生産系ジョブの頂点ともいえるユニークジョブ。

 その発展形のキングクリエイターを通り越した創造神というユニークジョブ。

 私が元々生産系に携わっていたこともあり、これはすんなり解析ができた。

 破壊神はね……戦闘ってものがほとんど経験なかったから。

 一方的に潰すか、やられる前に撤退するかの二択ばかりだったから苦手なんだよ。


「乱細雪……改め、神刀細雪!」


 なぎなただったそれは一本の刀に姿を変える。

 柄の部分は鞘になり、そちらに杖としての機能を保有させることで切れ味だけを追求した逸品になった神刀細雪。

 これならばと、侍をはじめとしたあらゆる戦闘系ジョブの神系統、戦神のジョブを発動させる。

 これは戦闘字体の経験は薄くても、戦闘系ジョブが多いから数で補えた感じなのかもしれんが……まぁいい。


「おぉ……いいね、お見事」


 袈裟懸けに切り裂かれた分霊が器用にも拍手をする。

 完全に真っ二つにしたはずなのに、傷口はそのまま宙に浮いている。


「今の君には資格がある。まったく、アルファといい君といい、器ってのは本当に厄介だね」


「どういう意味だ」


「そのままの意味だよ。とりあえずこれにて試練は終了。あぁ、外の観客には君が見たこともないような化物と一進一退の攻防の末辛勝って感じに魅せているから安心しな。というわけで、君とアルファ、後レーナだったね。その三人は塔へ登る事を許可するよ。ついでに勇者とそのお友達もね」


「……気前がいいな」


 何か裏があると言わんばかりだ。


「はっきり言うけど今回ばかりは裏とか抜きでやってるからね? そりゃ純粋な善意じゃないけど、今回ダンジョンに挑んだ面々で僕が失格としたのは神聖騎士のジョブ持ちだけだから」


「理由はなんだ」


「自主性、彼等は命令に従っただけで自らってのがいなかったんだよね」


 残念ながら、と続く言葉に納得した。

 なるほど、自ら動かない奴に用はないってことか。

 事実そんな連中が来たところで足手まといになるのがオチだしな。


「そういう事ならその招待受けてやる。だがこれだけは聞かせろ」


「なんだい?」


「世界はまだ大丈夫なのか?」


「そうだね、君のお友達が言っていた通り半年くらいは問題ないよ。その先は徐々に異常気象が始まって、天変地異で、最後にはどうなるか僕たちもわからない。世界が混ざるのか、それとも衝突してドカーンといくのか。高みの見物を決めようと思っていたんだけどなかなか面白い状況になってきたと思うんだよね」


「チッ……ならその半年は好きに使っていいととらえるぞ」


「構わないけど勇者たちを育てるのは無駄だよ。セーフティがあるから僕たちが作ったダンジョンをクリアしても信仰心を集めても王にも神にもなれない。そういう縛りがあるからこそ異世界人のジョブは強力な物になるらしいからね」


「心構えを教えるくらいはできる」


「そっか、じゃあ早めに再開できる日を祈ってるよ」


 神が祈るか……まったく、演技も三流なら皮肉も三流か。

 あー、疲れた……このまま石畳の上でいいから爆睡したい。


「しょ、勝者ユキ! チャレンジャーが未知の怪物を辛くもげきはぁ!」


 ……前言撤回、うるさくて眠れないし目立つの嫌だからさっさと退散しよう。


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