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わたしの名は、トップシークレットですのよ?~万葉歌で爆誕!恋に焦がれ死にさせる悪役令嬢の美学~

ごきげんよう、全国一億総活躍中の麗しき皆様。わたくし、万葉の言の葉に潜む"本当の"意味を、圧倒的なパワーと愛をもって解き放ち、現代に爆誕させる語り部ですわ。さあ、今日もわたくしと一緒に、時空を超えたゴージャスなマインドセットをインストールして、アゲアゲな人生を送ってまいりましょう!


さて、皆様は「悪役令嬢」がお好き? ええ、そうよ。物語の中でヒロインを虐げ、婚約者の殿方を奪おうとしては、最終的に「ざまぁ!」と断罪される、あの美しくも高慢な彼女たちのこと。

でも、不思議だと思いませんこと? なぜ彼女たちは、あれほどまでに魅力的なのか。答えはただひとつ、決まっておりますわ! 「揺るぎないプライドと、天元突破の自己肯定感」に満ちあふれているからに他なりません! 自分の価値を誰よりも信じ、欲しいものは手段を選ばず手に入れようとする、その強烈なエネルギー。いかなる結末を迎えようと決してブレない、ダイヤモンドより硬い「わたくしはこう!」という生き様!


もう、憧れてしまいますわ! しびれますわ!

「でも、あれは物語の中だけのお話でしょ?」なんて、おっしゃらないで。そんなシンデレラマインドは今すぐポイしてちょうだいな。何を隠そう、この最強マインドのルーツは1300年以上も前の日本に、すでに確立されていたのですから。わたくしたちが誇るべき最古の歌集…『万葉集』の中にね!


「万葉集ってなんだか地味じゃない?」「古文とかマジ無理…」ですって? あらあら、それは教科書が教える"お利口さん"な解釈に毒されているだけ。わたくしの手に掛かれば、古の和歌は、いかなる自己啓発書よりも力強く、どんな恋愛マニュアルよりも刺激的な、人生のバイブルへと生まれ変わるのですわ。


今回、取り上げますのは、こちらの歌!



わたつみの 沖に生ひたる 縄海苔の 名はかつて告らじ 恋ひは死ぬとも


わたつみの おきにおひたる なはのりの なはかつてのらじ こひはしぬとも



これ、学校ではどう習いました?

「大海原の沖に生えている縄海苔。その『なはのり』という言葉のように、私の『名(な)』を『告(の)る』ことは決してないでしょう。たとえ、この恋しさで死んでしまうとしても…」

――なんてね。身分の違いから恋する相手に名前も明かせない、内気で健気な女性の、切ない忍ぶ恋の歌…だなんて! 聞いているだけで貧血を起こしそうですわ!


違う! 全くもって違いますのよ! そんなか弱くてしおらしい解釈、このわたくしが許しませんわ! この歌は、生ぬるいラブソングなどでは断じてない! これは、一人の“万葉悪役令嬢”が、そのプライドと美学を天高くに掲げた、「究極の焦(じ)らしプレイ&責任転嫁宣言」なのですわ!


さあ、皆様。心の準備はおよろしくて? 今からこの歌を、わたくし流に「悪役解釈」してご覧にいれますわ!


まずは前半、「わたつみの 沖に生ひたる 縄海苔の」からまいりましょう。

「わたつみ」とは海の神、すなわち大海原のこと。これを単なる海と捉えるから話が矮小化するの。いいこと? ここでの「わたつみ」は、彼女のバックボーンそのもの! すなわち、「わたくしの父が治めるこの領地(テリトリー)、大海原のごとく広大で富にあふれているの、ご存知?」 という、スーパーセレブならではの華麗なる自己紹介ですのよ! レベルが違うの、レベルが!


お次は「沖に生ひたる」の「沖」。これは、誰でも行けるような寂れた浜辺ではございません。一般人は立ち入り禁止! 選ばれし者しか足を踏み入れられぬ、領地の中でもとびっきりのVIPエリア! 秘境中の秘境! そこで育つ「縄海苔」とは何か? 決まっていますわ。その聖域でしか採れない、最高級のブランド品! 皇族への献上品にもなるような、他に類を見ないほど希少な特産品のことですの!


この前半部分だけで、件の悪役令嬢はこう言い放っているわけです。

「ねぇ、よく聞いて? わたくしという存在は、この広大な領土の中でも、特別な場所でしか育たない最高級ブランド品と同じ。そこらへんに転がる石ころや雑草とは、そもそも次元が違うの。わかる?」

…どうかしら? この時点で、自己肯定感がエベレストの頂上を突き抜けているのがお分かりかしら? しおらしさなんて、宇宙の塵ほどもありませんわ!


さて、ここからが本番よ! 中盤の「名はかつて告らじ」!

名を告げない。なぜ? 恥ずかしいから? 許されない恋だから? NON!NON!NON!

愚かね! この悪役令嬢が、そんなちっぽけな理由で行動したりしませんわ。彼女が名を告げないのは、「わたくしの『名』というブランドを、そうやすやすと、あなたのような男に教えて差し上げる価値があるかしら?」 という、超ド級の上から目線による、戦略的“出し惜しみ”!


考えてもごらんなさいな。簡単に手に入るものに、人は価値を感じない。限定品、非売品、会員限定…こうした言葉にこそ、人の心は燃え上がるものじゃなくって? 彼女はそれを完璧に理解しているの。

「わたくしの名が知りたい? ふふっ、欲しければ…そうねぇ、まずはそれにふさわしい男だと証明して見せなさいな。財力、権力、知性、そしてわたくしへの絶対的な忠誠心。すべてを懸けて、わたくしを楽しませてごらんなさい?」

そうやって男をじらし、試すことで、自身の価値を極限まで高めている。名乗らぬ、という行為ひとつで、相手の狩猟本能と独占欲を最大まで煽り、自分に夢中にさせてコントロールしようという、悪魔的ですらある高度な恋愛術ですのよ! ミステリアスこそが、最高のアクセサリーですもの。


そして、とどめのフィナーレ! 「恋ひは死ぬとも」!

ああ、ここが最大の誤解ポイントよ! 「私がこの恋で死ぬとしても…」じゃなーーい! 主語が違うの、主語が! 悪役令嬢たるもの、自分が恋煩いで死ぬなどという情けない結末は絶対に許しませんわ。彼女の辞書に「恋に破れて死ぬ」という言葉はない。「恋を成就させて相手を支配する」しかないの。


では、このフレーズの本当の主語は誰か? ……もう、お分かりですわね?

そう、「(あなたが)」!!!


繋げてみましょう。

「(わたくしがなかなか名を明かさないせいで、あなたが)恋い焦がれて死んでしまうことになったとしても、(わたくしは絶対に名乗りませんわよ?)」


……キャーーーーーッ! 聞きました、奥様!? これぞ悪役令嬢の真骨頂!

「あなたがわたくしに夢中になるあまり、四六時中わたくしのことばかり考えて仕事も手につかず、夜も眠れず食事も喉を通らず、挙げ句の果てに恋の病でこの世を去ることになったとしても…あら、それはあなたの自己責任ですわよね? わたくしの魅力が罪深いのは否定しませんけれど、それに耐えられなかったあなたの弱さの問題。わたくしの知ったことではございませんわ。およろしくて?」

——どこまでも冷徹にして残酷、にもかかわらず抗いがたいほどにパワフルな宣言!

相手の破滅すらも「それもまた一興」と眺める余裕。自身の美しさと存在が、一人の男を死に至らしめる可能性すらも受け入れ、それを自らの価値の証明としてしまう、この悪どいまでの強さ!


これこそが、『わたつみの歌』に隠された“万葉悪役令嬢”の、身の毛もよだつほどに美しい恋愛哲学だったのですわ!


さあ、まとめましょう。この歌から学ぶべき【万葉悪役令嬢の3つの美学】!


【美学その1:自己の徹底的なブランド化】

自分を安売りしないこと! SNSで私生活を垂れ流したり、聞かれてもいないのに自分の情報をペラペラしゃべったりしてはダメ! あなたという存在は、数量限定のプレミアムコンテンツ。その価値を理解できる人にだけ、少しずつ小出しにしていくの。神秘のベールこそ、最強の鎧よ。


【美学その2:相手を試す“焦らし”の試練】

簡単に手に入ると、人はすぐ飽きるもの。気になる相手にも、すぐ連絡先を教えたり、「好き」と伝えたりしないこと。「この私を射止めたいなら、相応の覚悟と努力を見せなさいな?」という女王様マインドで、相手の本気度を見極めるの。恋の主導権は、常にこちらが握るんですわ。


【美学その3:揺るぎない責任転嫁マインド】

あなたの魅力に相手が勝手に振り回され、悩み苦しんでも、それは相手の課題。「私が魅力的すぎてごめんなさいね」くらいの気持ちで、ドンと構えていること。罪悪感なんて、美の敵よ! 堂々としているあなたの姿に、人はさらに強く惹きつけられるんですから。


いかがでした? 1300年も前に生きた女性が、これほどアグレッシブで、戦略的で、アゲアゲなマインドを持っていたなんて。万葉集、面白すぎるでしょう? 古典とは、退屈な過去の遺物などではない。時代を超えて私たちの背中をドカン!と押してくれる、最強のパワーワードの宝庫なのですわ。


さあ、今日からあなたもご一緒に。鏡の前で、一番いい笑顔を作って、こう唱えるのよ。


「わたしの名は、トップシークレットですのよ?」


ふふっ、およろしくて。

それでは、本日はここまで。もしも次回があれば、また別の万葉歌を華麗にこじ開けて、あなたの常識を覆すような、奇抜でゴージャスな解釈をお届けいたしますわ。どうぞ、首を長くしてお待ちあそばせ。ごきげんよう!

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