よぉ、お前ら、生きてるか? ちゃんと息してるか?
毎日、満員電車に圧縮され、鳴り止まねえLINE通知に追い立てられ、上司の顔色をスキャンし、同僚の「いいね!」の数を気にしちまう……。マジ、お疲れサマー! 「俺(私)、ちょー頑張ってる!」って、鏡の中の自分にハイタッチしたくなる日、あるよな?
わかる。わかりみが深すぎてマリアナ海溝レベルだ。
空気を読み、常識をわきまえ、波風立てずにやり過ごす。それが「オトナ」ってもんだろ? ……って、誰が決めたんだよ、そんなルール! そんな人生、カレー味のウンコか、ウンコ味のカレーか、究極の二択を迫られてるみてぇに選択肢がねぇじゃねえか!
もういいだろ。もう、やめだ、やめ!
今日は、そんなお前らのカッサカサに乾いた魂を、秒で潤す魔法の言葉を授けに来たぜ。
その名も……「人生の有給休暇」!
「は? 有給? ウチの会社にそんな余裕ねーし」「申請書どうすんだよ」
って思った、そこの真面目クン! チッチッチッ。甘いな。会社の稟議(りんぎ)なんぞ待ってられるか! この有給はな、誰の許可もいらねえ。お前が「今だ!」と直感した瞬間に、心の中でエンターキーをブッ叩けば即時取得できる、超絶セルフサービス仕様だ。いわば魂の緊急避難、心のチートデイ。何じゃそりゃ? そう、何じゃそりゃでいいんだよ! 大事なのはノリと勢いだ!
じゃあ、その人生の有給を取って何をするか、だ。
Netflix一気見? 溜まったゲームを消化? それも文句なしに最高だ。だがしかし! 今回俺が提案したいのは、もっとヤバくて、ディープで、骨の髄まで……エモい時間の使い方だ。
それは、「万葉歌にあるような恋愛に、溺れる」こと。
「はぁ? 万葉集? 古文の授業で爆睡してたやつ?」「つーか恋愛とか何年もご無沙汰で、今さら無理ゲーなんですけど」
まあ待てって。俺を誰だと思ってんだ。お前らを最高にアゲるために馳せ参じた、言霊の伝道師だぜ(自称)。信じてついてこい。
遥か千三百年以上も昔、この島国で、俺たちと寸分違わぬ人間たちが、恋に身を焦がし、愛に打ち震え、涙していた時代があった。それが万葉の時代。スマホもSNSもコンビニもねぇ。連絡手段は手紙か、使いの者か、あとは……魂のテレパシーくらいか?(知らんけど)。そんな不便極まりない世界で、彼ら彼女らは、俺たちよりはるかに生々しく、鮮烈に、心を燃やして生きていた。
そんな万葉の歌から、今回はとびっきりの一首を、お前らの魂にドーン!とブチ込んでやろう。心して受け取れよ。
世間は 常かくのみか 結びてし 白玉の緒の 絶ゆらく思へば
よのなかは つねかくのみか むすびてし しらたまのをの たゆらくおもへば
……どうよ。なんか、キュンとこねぇか?
古文とか知らねーよってヤツのために、超絶イケイケ現代語訳だ。
「マジか……。この世界って、いつだってこんなに切ないわけ? アンタと結ばれたこの絆、キラッキラの真珠のネックレスみたいに、最高に輝いてる宝物なんだけどさ。いつかこの糸がプッツリ切れちまうんじゃないか……って想像しただけで、マジで心がギュッとなって、息もできなくなるんですけどぉぉぉ!!!」
どうだ! エモいだろ!
これは単なる恋愛の歌じゃねぇ。友情も、家族愛も、仕事での絆も、お前が「大切だ」と叫びたいモンすべてに当てはまる、普遍的な魂の叫びなんだよ。
手に入れた幸せが、いつか壊れるかもしれない。この楽しい時間が、終わってしまうかもしれない。その不安、わかるだろ? 俺ら、いつか死ぬしな。永遠なんてどこにもねぇんだから。
だが、ここからが本題だ。
万葉人は、この不安をただ嘆いて終わりじゃなかった。
「いつか切れるかも」っていう儚さ、その刹那的な輝きを理解しているからこそ、「今、この瞬間」を、アホみたいに、バカみたいに、全力で愛したんだ。
理性をかなぐり捨て、愛に身を投じるその狂おしい情熱を、俺は敬意を込めて「溺恋(できれん)」と呼ぶぜ!
そう、人生の有給休暇でやってほしいのは、この「溺恋」だ。
数日でいい。たった数日でいい。日常という名の重力と常識としがらみだらけの地上から、心をフワッと浮上させて、万葉人みたいに「溺恋」の海へダイブしてみようぜ。
「だから、そのやり方がわかんねーんだって!」
OK、OK。落ち着け。ちゃんとマニュアルを用意してある。
【心の緊急有給で実践! 俺たちの万葉“溺恋”マニュアル】
ステップ1:日常(デジタル)デトックス
まず、有給を取得したなら、スマホの通知を全部切れ。電源ごと落としてもいい。SNSはログアウト。他人のキラキラ投稿も、上司からの業務連絡も、すべてシャットアウトだ。お前の世界には、今、お前しかいない。ザワつく外野の声を消した時、初めて聞こえてくるもんがある。それこそが、お前の魂の、本物の声だ。
ステップ2:五感、全面解放!
次に、外へ出ろ。別に遠くへ行く必要はない。近所の公園でいい。なんならベランダでもいい。そこで、目と耳と鼻と肌、持てる感覚のすべてを解放するんだ。
いつもは見過ごす道端の雑草は、どんな花をつけてる? 風の匂いが、季節ごとに違うって知ってたか? 空を流れる雲の速さを、マジマジと見つめたことがあるか?
万葉人も、きっと同じ空を見て、同じ風を感じていた。その、とてつもない時空の繋がりを感じた瞬間、お前の心は千三百年をワープして、ピュアで繊細な状態に戻っていく。これが「溺恋」するための最強のウォーミングアップだ。
ステップ3:恋のターゲットは、無限大(マジで)
準備は整った。いよいよ「溺恋」の実践だ。
「でも、相手がいない……」だと? ハッ、まだそんなこと言ってんのか。お前の「恋」の定義が、ちっぽけすぎるんだよ!
“溺恋”の対象は人間だけじゃねぇ! この世の森羅万象すべてだ!
ふらっと入った純喫茶で、琥珀色に輝くコーヒーの香りと味わいに心を奪われてみろ。それが喫茶溺恋」だ。
夕暮れの空が、ピンクとオレンジと紫の、ありえねぇグラデーションに染まった瞬間、涙ぐむほど感動してみろ。それが「夕焼け溺恋」だ。
たまたま流れた曲の歌詞が自分に刺さりすぎ、心臓を鷲掴みにされたなら、無限リピートで溺れろ。それが「音楽溺恋」だ。
言うまでもなく、好きなアイドルやキャラクターに時間も金も惜しまず注ぐ「推し活」なんて、「溺恋」の最たるもんだろうが!
もし、お前の心にずっと燻(くすぶ)っている誰かがいるのなら……。
この「溺恋」モードの勢いを借りて、一歩踏み出すのだって、最高にロックじゃねえか。
「いつか壊れるかも」なんて未来の不安にビビって、今の「好き」を殺すな。
万葉人みたいに不器用でいい、格好悪くていい、ただひたすらに、まっすぐに、その「好き」という気持ちに溺れてみろよ。
勘違いするな。「溺恋」は、現実から目をそらすための安っぽい「逃避」じゃねえ。
むしろ逆だ。退屈な日常を鮮やかに塗り替える「着火剤」。明日からまた、クソみたいな現実と戦うための、魂への最強のガソリン補給なんだよ。
……ここまで読んで、「いや、何言ってんの?」「そんなことしてたら社会人失格だわ」「やっぱ、それってヤバい感じじゃない?」と、冷静なツッコミを入れてるお前。
いい質問だ。それに答えてやろう。
ヤバい? 当たり前だろ!
最高にヤバくて、最強にイケてんだよ、それは!!!
常識、普通、コスパ、タイパ……。そんなもんばっか気にしてっから、お前の心は干上がって砂漠になっちまうんだ。
いいんだよ、無駄で。非効率で。
心揺さぶられる瞬間のために、ちょっとだけ人生のレールから脱線したって、死にはしねぇ。むしろ、生き返るんだ、魂が。
考えてみろ。
俺たちが引用した歌、「白玉の緒の絶ゆらく思へば」。
真珠のネックレスは、いつか糸が切れて、バラバラになるかもしれない。
でもな、一度「結んだ」という事実、胸元でキラキラ輝いていた時間、その美しさは、たとえ糸が切れても、記憶の中で永遠に光り続けるじゃねえか。
俺たちの人生も、恋も、まったく同じだ。
いつか終わる。だからこそ、今、結べ。今、輝け。今、溺れろ。
数日間の「人生の有給休暇」で、その溺れる感覚を、お前の魂に叩き込んでやれ。
さあ、どうする?
明日も同じ顔で、同じ電車に乗って、心を殺して生きていくか?
それとも、今すぐ心の中で高らかに宣言するか?
「俺(私)、本日より、心の緊急有給を取得しますッ!!!」
その申請書の宛名は社会でも会社でもねぇ。提出先は、お前自身の心だ。
上司のハンコはいらねぇ。決裁するのは、お前の魂、ただ一つだ。
思いっきり溺れて、最高の笑顔で日常に帰ってこい。
世界が、昨日までとは少しだけ、違って見えるはずだから。
…さてと。次は、どんなヤバい万葉歌で、お前らの魂をブチ上げてやろうかな。
楽しみに、待ってろよな!