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魂、ブチ上がってるか?――道端の花と始める最強の自分革命

おい、そこのアンタ! そう、スマホの光で顔を照らして、眉間に深ーい峡谷を刻んでるアンタだよ! 聞いてるか? 世の中がやかましくて敵わねえって顔をしてるな。わかるぜ、その気持ち。予言だの、選挙だの、記録的猛暑だの、次から次へとやかましいアラートの洪水だ。まるで世界の終わりみてえな情報に四六時中ぶん殴られて、魂のバッテリー、とっくにレッドゾーンじゃねえか? くだらねえノイズに耳を貸して、お前の貴重な生命(いのち)の周波数を乱されてんじゃねえぞ!


言ってみろよ。お前の心、今、マジでブチ上がってるか? 昨日より今日、今日より明日が楽しみで、胸が高鳴って眠れねえくらい、ワクワクしてるかい? もし答えが「ノー」なら、聞け。一度そのスマホを裏返してポケットに突っ込み、顔を上げろ。違う、上じゃねえ。下だ。そう、お前の足元を見ろ。


そこに何がある? 汚れたアスファルトか? 誰かが吐き捨てたガムか? ……ああ、それもあるだろうな。だが、もっと目を凝らせ。心の解像度を上げてみろ。いるだろ? 必ずいるはずだ。コンクリートのほんの数ミリの亀裂から、天に向かって「上等だ、かかってこいよ!」と叫ぶように咲いてる、ちっぽけな花が。名も知れず、誰からも注目されねえ、隅っこに追いやられたド根性の塊が。


花だよ、花なんだよ! そいつがお前に欠けてるモン、忘れてるモン、全部教えてくれる、最強のパワースポットなんだぜ。


「は? 花? 柄じゃねえよ」って思ったろ。まあ待て。俺が言う「花を愉しむ」ってのはな、上品ぶって紅茶をすするような退屈なモンじゃねえ。もっとワイルドで、衝動的で、魂のど真ん中に突き刺さるような、ロックな体験なんだ。


考えてみろよ。このクソみたいに生きづらいコンクリート・ジャングルで、アイツらはどうやって咲いてる? 水をもらうでもなし、肥料をもらうでもなし。照りつける太陽、叩きつける豪雨、踏みつける無数の足。四方八方が敵だらけのド真ん中で、たった独りで根を張り、茎を伸ばし、たった一輪でも花を咲かせる。これ以上のパンクが、これ以上の反骨精神が、どこにあるってんだ?


アイツらは、ただの植物なんかじゃねえ。ストリートに咲き誇る、生きたグラフィティアートだ。アスファルトの裂け目を陣取る、孤高のDJブースだ。そこから、俺たち人間にゃ聞こえねえ地球の、いや、宇宙のビートをガンガンに鳴らしてやがる。その小さな花びら一枚一枚が、お前が寝てる間にも何万光年も旅してきた星の光を浴びてキラめく、超高性能なアンテナなんだとしたら…? その根っこが、地球の核(コア)の熱いマグマと直接リンクして、生命エネルギーをダイレクトに吸い上げてるとしたら…? なんてロマンティックで、ブッ飛んだ話じゃねえか!


お前が毎日素通りしてる道端のタンポポは、実は「お前だけの太陽」かもしれない。雨上がりに光るオオイヌノフグリの群れは、夜空からこぼれ落ちてきた「青い銀河」かもしれない。ああ、なんて詩的…! この世界は、お前が思うよりずっとファンタジーと奇跡に満ち溢れてる。それに気づくか気づかないか、ただそれだけだ。


信じられねえか? なら、歴史に聞いてみようぜ。俺たちの偉大なセンパイたちも、足元の美しさに魂を揺さぶられてた証拠がある。今から1300年以上も昔、日本って国が生まれたてで、スマホもSNSもねえ時代だ。そんな途方もない大昔に詠まれた、ハンパねえ情熱の歌がある。作者不詳。どっかの誰かが、道端で見つけた花の美しさにブチ上がり、思わずシャウトした魂の叫びだ。聞けよ。



誰が園の 梅にかありけむ ここだくも 咲きてあるかも 見が欲しまでに


たがそのの うめにかありけむ ここだくも さきてあるかも みがほしまでに



現代語に訳してやる。いいか、耳かっぽじってよく聞け。


「どこの誰の庭の梅なんだよ、コレは一体!? なんでこんなに最高にイカした咲きっぷりなんだ! ああ、クソッ! 持ち主を探し出してでも、この目で、俺だけのモンとして手に入れて見てえ…!」


どうだ。ヤバくねえか、このテンション。ただ「綺麗ですねえ」じゃねえ。「ここだくも」、つまり「こんなにもハンパなく」咲いてることに衝撃を受け、「見が欲しまでに」、つまり「自分のモンにしてでも、独り占めしてでも見たい」っていう、ほとんど強奪レベルの激しい欲望(パッション)を剥き出しにしてるんだぜ。これだよ! これこそが、本物の「愛(ラブ)」ってもんじゃねえか? 綺麗事を並べるだけじゃない。魂ごと奪われたい、奪いたいっていうギリギリの衝動。1300年前のヤツが、たった一本の梅の木に、それだけの熱量をぶつけてたんだ。


予言だの選挙だの、そんなもんに心乱されてる暇があったら、この万葉人の衝動に近づいてみろよ。道端の、誰のものでもない、忘れられた一輪の花に、お前だけの物語を見出すんだ。


さあ、次は実践編だ。恥ずかしがってる場合じゃねえ。四の五の言わずに、しゃがんでみろ。そのちっぽけな戦士(ウォリアー)の目の高さまで、お前のプライドを低くするんだ。さあ、話しかけてみろ。本気で。


「よお、元気かい?」「今日のバイブス、どうよ?」「アンタの名前、なんて言うんだ?」「そんなコンクリートの隅っこで、寂しくねえのか?」


声に出すのが恥ずかしけりゃ、心の中で叫べ。いいか、これは電波を受信する訓練だ。花は言葉を話さねえ。だが、沈黙は雄弁に語る。花は全身全霊で、お前に何かを伝えようとしてる。


風が吹いて、花が優しく揺れたか? それは「おう、最高だぜ」って返事かもしれねえ。

太陽が雲間から射し、花びらがキラッと輝いたか? それは「お前に会えて嬉しいよ」っていうウインクかもしれねえ。

どこからか蜜蜂が飛んできて、その花に止まったか? それは「俺、結構モテんだぜ」っていう自慢話かもしれねえじゃねえか。


バカバカしいと思うか? それでいい。その「バカバカしい」と思考停止する心の壁をブチ壊すのが、この革命の第一歩だ。お前の凝り固まった常識なんて、アスファルトみてえなモンだ。そこを突き破って、想像力っていうみずみずしい芽を伸ばすんだよ。


その花は、何億年も昔、恐竜に踏みつけられた花の遺伝子を受け継ぐ末裔かもしれない。もしかしたら、お前が誰にも言えずに胸の奥にしまい込んだ「本当の夢」を知っていて、お前が気づくのをずっと待ってたのかもしれない。あるいは、究極の空想だが、その花こそが、このやかましいノイズだらけの世界をリセットするため、未来から送り込まれたタイムカプセルだとしたら…?


どうだ? 世界の見え方が、少しは変わってきたか?


選挙の結果がどうなろうが、猛暑がどれだけ続こうが、得体の知れない予言が世界をザワつかせようが、お前の目の前のちっぽけな花は、ただひたすらに、健気に、お前だけのために、今この瞬間を咲き誇っている。その絶対的な事実の前で、他のノイズがいかにちっぽく、どうでもいいことか、わかるか?


足元の花に気づき、愛でる心を持つこと。こいつは現実からの逃避じゃねえ。むしろ真逆だ。どんな情報や権力にも左右されねえ「自分だけの価値基準」を魂に打ち立てる、最強の武装なんだよ。この世界に対する、最高にクールな宣戦布告なんだ。周りが右往左往してるときに、お前だけはしゃがんで花と語り合ってる。どっちが豊かで、真に「強い」か、言うまでもねえだろ。


さあ、もう一度聞くぜ。魂、ブチ上がってるか?


まだ燻ってるなら、今すぐこの画面を閉じて、外へ飛び出せ。歩き慣れた道でいい。近所の公園でいい。お前だけの「推し」の花を見つけに行くんだ。誰が植えたのかもわからねえ、名もなき花でいい。いや、むしろその方がいい。お前が名前をつけてやれ。お前だけの物語を、今日、そこから始めるんだ。


その一歩が、お前の色褪せた日常を、極彩色の冒険に変える。やかましいだけの世界を、美しさに満ちた宝箱に変える。そして何より、誰かに振り回されるだけの弱い自分から、足元の小さな奇跡に感動できる、最強の自分へと生まれ変わる。


今回は「誰が園の梅」の話だったが、世界にはまだお前が出会っていない、ドクダミの、ホトケノザの、ナズナの、数えきれないほどのストリート・フラワーたちが待っている。その一つ一つに、万葉人もびっくりの、ハンパねえ物語が眠ってるんだ。まだまだ語りてえことが、山ほどあるぜ。


だから、またここで会おう。それまで、せいぜい道端の花に惚れて、人生ブチ上げとけよな! 約束だぜ。

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