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第83話 上位魔族⑤

「おおっ!上手くいった。」


ケイガンが連携魔法の効果の高さに軽く感動をしていると、またもやテスが冷静に答えた。


「当然です。タイガさんの言うことに、間違いなんかありません。」


確かにその通りだ。


単純な組み合わせとは言え、魔法は1人につき1属性のみしか使えないという固定観念にとらわれていた。これまでは、誰も異なる属性魔法の連携など試みたことはなかったのだ。


「魔法が使えないのに、とんでもない発想をするものだ。」


無意識にそんな言葉が出た。


「次は私が連携魔法やります!」


ミシェルが元気よくタイガに申し出た。


「いや、それはやめておこう。」


「えっ!?なぜですか?ギルマス補佐、私に冷たくないですかぁ?」


ああ、こいつマジでうざい。


「ミシェル、おまえの魔法に何を組み合わせるんだ?」


「ええっと・・・火は相殺されるから、やっぱり風ですね!」


「メテオライト・ドライブに風撃を組み合わせたらどうなる?」


「えっと、スピードが速くなります。」


「それを誰がコントロールできるんだ?」


「・・・ケイガン?」


「えっ?俺!?あの質量のコントロールは無理だぞ!」


だと思った。


メテオライト・ドライブは威力がすごいけど、本人すらちゃんとコントロールできているようには見えなかった。


「仲間が巻き添えを食らうかもしれないからダメだ。」


「ぶぅ~。」


そんな風にふくれてもダメだぞ。


かわいくないし。


その様子を見て、ケイガンは思った。


ああ・・・めちゃくちゃのようだけど、ギルマス補佐はちゃんと考えているんだと。


味方の魔法で死にたくはないからな。


「他の三体が向かってくるぞ!」


バーネットが言うように、残りの三体はそれぞれに別れて攻撃を仕掛けようとしていた。


「パーティーごとに別れて各個体に対処。一体は俺が受け持つ。」


「「「「はい!」」」」


他のメンバーに気負いや恐れは感じられない。


シスやテスたちも、特訓や先程の連携魔法の威力を経験して、精神的な弱さを克服しつつあるようだ。


俺はすぐにフォローに入れるように、目の前に迫った魔族への攻撃に集中する。時間はかけていられない。




なんだ?


あんな魔法は見たことがないぞ。


炎柱が青くなり、強烈な温度で標的となった魔族を障壁ごと消し炭にした。


上位魔族は、これまでに体験したことがない事象に意識を奪われていた。


ここにいるスレイヤーたちは、人間のレベルで考えるとかなり強い部類に入る。そして、後から来た者たちは先程の投石と言い、今の青い炎柱といい、戦い方が奇抜そのものである。


目の前のスレイヤーが言っていたトリックスターとは、ただ相手の虚をつき、戦いを有利にするという意味ではなかったのか。あれは、新種の魔法や戦法のオンパレードではないか。


「驚いたか?」


視線を正面のスレイヤーに戻す。


なぜか自慢げにニヤニヤと笑う顔がうっとうしい。


「あの魔法もトリックスターと呼ばれている奴の仕業か?」


「あ~、トリックスターっていうのは、俺がさっき勝手につけた二つ名だ。それと、あんな魔法は俺も初めて見た。」


「あそこにいるのは、普段から何をしでかすかわからない人間と言うことか?」


「ハハッ。その通りだ。でも、まともに戦っても相当強いぞ。」


「我の同朋を葬ったのは奴か?」


「だったらどうするんだ?」


「知れたことよ。この場で消してくれるわ。」


アッシュの目に強い光が宿った。


「それじゃあ、まずは俺を倒してからじゃないとな。あいつは俺よりも強いぞ。」


闘気とでも言うべきか。


殺気とは異なる強いオーラが膨れ上がる。


「むぅ・・・」


先程までとは別人のような雰囲気を醸し出す人間。周りの仲間を巻き込まないように力をセーブしていたか。


上位魔族は、ここに来たのは正解だったと感じた。


下級魔族の尻拭いにわざわざ出張ってきたという意識があったが、あのトリックスターといい、目の前の人間といい、予想外の存在に出会うことができた。


「おもしろいな。まさか人間ごときに、こんな愉快な気分にさせられるとは思わなかったぞ。」


「それは何よりだ。」


「本気で行く。すぐに死ぬなよ。」


上位魔族の邪気が増幅した。


これまで以上の強者の気配に、アッシュは恐れではなく、歓喜の気持ちを感じる。


「良いねぇ。このピリピリした感覚。久しぶりに楽しい戦いになりそうだ。」


バトルジャンキーが恍惚とした笑みを浮かべた。





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