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材料編  61 【強制終了版】

 クリスは二階まで駆け上がると、辺りを見回す。

「奥って、どっちだよ?」

 娼館の二階は、真っ直ぐ、右、左と廊下が別れている。クリスは左手と左膝を入れ替えてイフューを支え、片足でバランスを取りながら左のポケットの鍵を取り出して見ると部屋の番号を確認する。

「真っ直ぐか」

 鍵を口に加え、イフューを抱き直すと真っ直ぐに突き進む。左右にある扉を一切無視して一番奥の扉を目指す。

「ここだ」

 イフューをそっと下ろすと、扉に手を掛ける。

「ん? 開いてないぞ?」

 ガチャガチャと扉のノブを回すと、中から声がする。

「部屋の鍵を間違えていませんか?」

「鍵?」

 クリスは思い出す。

(焦り過ぎだろ? オレ……)

 クリスは口から女主人に貰った鍵を手に持つと、鍵で扉を開ける。

 そこには、肩まで金髪を伸ばしたエルフと短めに金髪を揃えたエルフの少女が居た。歳は髪の長い方のエルフの少女の方がやや上のようだ。

「エルフ……? 気を利かせてくれたのか」

 少し呆けていたクリスは目的を思い出すと、頼みを聞いて貰うため、床に正座をして頭を床に擦りつけた。

「力を貸してくれ!」

 珍妙な客に、二人のエルフの少女は動揺する。ここに彼が居るということは、自分達は間違いなく買われた立場なのだ。力関係で言えば間違いなく彼の方が上だ。

 二人のうち、年上のエルフの少女が声を掛ける。

「あ、あの……、ご用件は?」

 クリスは顔を上げて立ち上がると、部屋の外で待たせっぱなしのイフューを連れて入る。

「この子に回復魔法を掛けたいんだけど、その前に入浴を――」

 今度は、クリスが動揺する。

 目の前のエルフの少女が、手を口に持っていったまま震えている。

「イ、イフュー……」

 イフューが聞き覚えのある声に顔を上げる。

「その声……。ケーシー姉さん?」

 もう一人のエルフの少女も声をあげた。

「イフュー!」

 イフューが顔を向ける。

「エス姉さん?」

 エルフの少女達がクリスを押し退けてイフューを抱きしめている。クリスは、ここに来る前に聞いていたイフューの言葉を思い出す。

(確か二人のお姉さんと家を出て、遊びに行ったって……)

「いきなりビンゴかよ」

 クリスは落ち着きを取り戻すと、成り行きを待つことにした。

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