三ヶ月後――。
場所はドラゴンテイル。その和風の城の中で、キリはテンゲンに文句を言っていた。
「イオルクは、何を考えておるのじゃ! 突然訪ねて来て、鍛冶修行をさせろなどと! あやつは戦ってこそ、価値があるというものであろう!」
「そう、いきり立つな。キリの旦那が、イオルクに負けたのだから仕方あるまい。その条件を出したのはキリじゃろうに……」
「わらわの夫が負けるとは思いませなんだ」
「見くびり過ぎじゃ」
テンゲンは大きな溜息をついて、キリに尋ねる。
「ところで……。そのイオルクは、どうしておる?」
「今日も、刀匠と刀を打っております」
「腕は、どうじゃ?」
「見られますか?」
キリが一振りの刀を取り出してテンゲンに渡すと、テンゲンは刀を鞘から抜き出し、刀身を確認する。
「驚いたな……。ちゃんと実戦で使える刀じゃ……」
「そうなのですよ。イオルクは何をトチ狂ったか、本気で鍛冶屋を目指しているのです」
「あれほどの男が……」
「理由を聞いても『ノース・ドラゴンヘッドで斬られたロングダガーのせいだ』の一点張り。『それに対抗できる切れ味は、ドラゴンテイルの刀だけだ』を繰り返すばかり」
「それほどの衝撃だったのじゃろう。そして、それに見合う武器がなくて、自ら造るしかないと決心したんじゃな」
「何故、お分かりに?」
「この刀のせいじゃ。上達が早いのは目的の刀が頭にあるからじゃ。そして、これだけの刀の出来に、イオルクは納得していない」
「何を考えているのか……」
「まあ、暫く様子を見よう」
テンゲンとキリは、イオルクがどの程度の刀を造りたいのか分からなかった。それはエルフとの約束で語れない部分もあるため、イオルクが説明していないことに理由がある。
最高の鉱石を扱うのに見合う腕を身につけ、過去に体験したロングダガーを切り裂いた武器に対抗できる武器が最終目標。ドラゴンテイルでは、この世界で最高の切れ味を持つ刀の造り方を習得し、その技術を使って武器を造ると決めていた。そのための妥協を許さず、イオルクは基礎の製鉄技術から、じっくりと教えを仰いでいた。
そして、時間は流れていった。