今起こったことをありのまま話すぜ?
マリアお嬢様を助けたと思ったら火事に遭遇していた。
ナニ言ってるのか分からんと思うが、俺は分かってるから大丈夫☆
「――とか言ってる場合じゃねぇ!? ちょっ!? なんで火の
「落ち着け下郎。あのハゲ頭のせいじゃ」
そう言って、いまだ気を失っている坊主頭を
「あのハゲ頭の吸っていたタバコが近くに落ちていた新聞紙に引火したんじゃ」
「おいコラ坊主! テメェの仕業か!? 起きろ、寝てんじゃねぇ!」
慌てて坊主頭に詰め寄り、ガクガクと前後に身体を揺する。
が、坊主は「もう食べられないよぉ~」と呑気なコトを口にするだけで一向に起きる気配が無い。
その間にもモクモクと黒煙が部屋に充満し、俺たちを焼き殺そうと炎の勢いが増していく。
チリチリと肌を炙るような熱さを前に、気がつくと俺は坊主頭に向けて怒鳴り散らしていた。
「ざけんな! 起きろ! このままじゃ全員死ぬぞ!? ……クソ、起きねぇ! 誰だよ、コイツを気絶させたバカは!?」
「キサマじゃ、下郎」
俺だったわ、ヤッベ☆
「時間がない、下郎ッ! その寝転がって居る
「かしこまりましたっ!」
俺は素早く坊主と顎鬚を小脇に抱きかかえ、大柄の男の襟首を噛んでズルズルと引きずるように廃墟の出口を目指す。
そのすぐ後ろをマリアお嬢様も着いてこようとして――。
「ッ! キャッ!?」
「
燃え朽ちて耐久性が無くなったのか、天井が俺たちを分断するように落下。
結果、マリアお嬢様お1人だけが部屋に残されるような形になってしまった。
しかも最悪なことに、焼け落ちた天井が部屋の出入り口を塞いでしまい、マリアお嬢様が脱出できない!
「プハッ! ちょっと待っていてくださいマリア様ッ! すぐこの邪魔な天井モドキを
「いやよいっ! 妾の事は放って、さっさとその3人を連れて逃げよ!」
「何を言っているんですか!? 出来るワケないでしょう、そんなこと!」
トチ狂ったコトを言い始めるマリアお嬢様を無視して、部屋の出入り口を塞いでいる天井モドキを退かそうと踵を返す俺。
もはや1分1秒も時間が惜しい!
早く退かさないと!
と焦る俺の心を見透かしたように、マリアお嬢様が至極落ち着いた声音で、
「妾なら大丈夫じゃ。部屋の隅にある換気口から一足先に脱出する。だからキサマもさっさとその3人を連れて脱出せよ。これは命令じゃ」
あの部屋に換気口なんてあっただろうか?
と、必死に間取りを思い返そうとするのだが、燃え盛る火の粉がソレを邪魔して許さない。
近くでこの廃墟を支えているであろう柱の1つが倒壊する音が聞こえてくる。
もう迷っている時間はない。
「……分かりました。では外で合流しましょう!」
「うむっ。上手くやるのじゃぞ下郎」
俺は部屋に取り残されたマリアお嬢様から背を向け、再び大柄の男の襟首を口に含み、ズルズルと引きずって廃墟の出口へと移動し始めた。