マイカがリーセロットとララの方を見たところ、二人とも首を横に振った。
それはそうである。
二人にも自分が異世界から来たことは、つい先程話したばかりなのだから、アフネスが聞いていた訳がない。
「え…?どうして…?」
マイカが不思議に思い、アフネスに尋ねた。
「ワタシねー、モノの本質を見極める特殊
「本質を見極める
「だからぁ、このワタシの
アナタ、自分のこと、何も判ってないんでしょう?」
(うわっ!そんなことまで判るのか?…何だかコワい気もするけど、生まれ変わった、このエルフの自分について知らないこと、疑問に思ったことを解明してくれるかもしれない。)
「ちょと待って下さーいねー。」
と、アフネスは後ろにあった棚から、灯りの水晶玉よりもやや小さめな水晶玉を取り出し、机の上に置いた。
「んー、どれどれー…えっ!ナニ?ナニナニ?
アハッ、アハハハ!ギャハハハハハッ!!」
アフネスが水晶玉を覗き込み大笑いしたが、マイカ達三人には水晶玉に何も見えないため、訳が判らない。
「これ、アフネス何なのです?説明しなさい!」
と、リーセロットがアフネスに言うと
「いやーアナタ達三人には見えないと思うけど、ワタシにはこの水晶に
オッサンよ!オッサン!!」
とアフネスが答え、それに対しリーセロットが
「それは先程、私達もマイカ様から聞いたわ。でも、それを笑うなんて!
それと、
とアフネスを
「だって想像してみ?筋骨隆々の
でも、それだけじゃなくて、目だけはキラキラしたキレイな瞳なんよ!
「ハゲのオッサン…目だけが…乙女…
クッ…ククッ…プププッ…」
リーセロットがアフネスの言った通り想像し、笑いを
「…キモッ…」
と一言、小さな声で呟いた。
(…そうか…やっぱり女性からすれば、オレってそんな感じか…
どおりでモテなかった訳だよ…)
マイカは、アフネスとリーセロット、ララの反応を見て
「マイカっち、どしたん?今はキレイだからいいじゃん。」
「アフネス!その呼び方!あと、さっきから口の利き方自体が失礼よ!!」
「うるさいなあ、リーセロットちんはー。
ワタシも
でも、マイカっちの中をよく見てみたら、
「はい、その通りです。
様を付けて呼ばれるのとか、
はっきり言って好きではありません。」
と、マイカはアフネスの発言に同意した。
「ほら、タメでいいじゃん、タメで。」
「アフネスさんの言う通りです。敬語なぞ使わず、名前もマイカと呼び捨てにして下さい。」
「え…いや…」
「し…しかし…」
と、リーセロットとララはマイカの言い分に戸惑いを見せた。
その二人の煮え切らない態度を見て、マイカは思い切って
「では私も敬語とかやめます。名前も呼び捨てにします。いや、する!
リーセロット、ララ、そしてアフネス、よろしくね!!」
と、宣言するように言った。
「ヤッホー、マイカっちヨロピクー。
ほら、リーセロットちんも、ララちんも!」
「…あ…マイカ…さん。」
「いや…マイカ…ちゃん?」
と、まだ
「マ!イ!カ!!」
と、マイカは強く念を押した。
「話が違う方に
じゃあ、
「エルフの始まり?」
「そうそう、元々エルフって、姿が、んー肉体が?無かったらしいんよね。」
「え!?肉体が!?」
「そー。魂そのものだけの存在?まー精霊みたいなもん?」
「精霊…」
「それが何らかの理由で肉体を持つようになってー、それが始まりのエルフで、
その始まりの
「全てのエルフ種は、その始まりの
「そうそう。それでね、ワタシみたいな
「ふーん…じゃあ、この私の、
「
でも、伝承では
「でも、私がここに存在するんだから何処かに居るんじゃないの?
それで、
「うーん…それなら、マイカっちの本質を見極めている事で判る筈なんだけどねー…
どう
「…じゃあ、別の人格に私の魂が乗り移ったという可能性はないのかな?」
「うーん…それも、ワタシの
でも、そんなん一切ないわー。」
「でも私、この世界の言葉も文字も最初から判ってたよ、誰にも習わずに。
これって、やっぱり何年かこちらで暮らしていたからじゃない?」
「うーん…もしかして…始まりの
「始まりのエルフと同じ…?」
「うん。始まりの
「ピョコッと?」
「もしくは、バーンッて…よくよく考えたらオバケみたいね、始まりの
「オバケて…それと同じってか?」
(いや、確かに今のオレってオバケみたいなもんか)
「それで突然現れたのに、全てを判っていた状態で世に出てきたんだって。」
「全てを判って?」
「うん。だからマイカっちが、こっちの言葉やら文字やらが最初から判っていたのも、そういう事なんかも?始まりのエルフがそうだったように。」
「でも、私、その他の事は何も知らないよ。どんな国があるとか、どんな人がいるとか、モンスターの事とか魔法の事とか…」
「それは、前世の記憶が邪魔してるとか?
前世の記憶のせいで、この世界の情報が入る余地がなかったんじゃないかな?」
「確かに前世の事は全部覚えている!」
「まあー…マイカっちの生まれについては推定でしかモノ言えないけどねー。
言ったとおり、ワタシの
大体、
「始まりの
「うん。オトコとオンナの
「世の中の事を知り尽くしている、とか、全てその意志で決定される、とか…
…それって、人というより…」
「そだねー、まんま神様だねー、まるでー。
だからエルフ種が多くの人々に信仰されてるのは、その始まりのエルフのせいかもねー。
でねー、一説によると、その始まりのエルフの二人はまだ生きていて、この世界の何処かに居るらしいんよ。」
「え!?じゃあ、もしかして私、その二人の娘ってことない?
他に
突然、世に出るってより、そっちの方が現実味ない?」
「んー、面白い説ねー。
その二人の実の娘じゃないにしても、世の事全てを知ってたり、その意志で決定してるってんなら、マイカっちがこっちの世界に生まれ変わった事についても、何か知ってたり関わってたりするのかもね。」
「その始まりの二人は、生きているとしたら何処に居るのかな?」
「伝承について、ワタシはパパに聞いたんだけどー、パパも伝承を全部聞く前にエルフの里を出たからさー、みんな知ってる訳じゃないのよー。
リーセロットちん、ララちんら
だから判らないのよー。」
「…そっか…」
第54話(終)
※エルデカ捜査メモ〈54〉
その、長い今までの人生の中で、アフネスは何度も話し方を変えており、現在の話し方は四周目である。