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28 感動できない再会

「あいつら、全部ここに閉じ込めてやる。一か月、いいえ、半年だ……」

イズルは汗を拭きながら、砂から足を上げて挿して、一歩一歩苦労して前進する。

砂の下はボールプール、床は足の届かない深いところがある。

天井のスポットライトはまぶしい。人工の猛暑と柔らかい地面は体力を激しく消耗させる。

イズルは眩暈が続いている。

そんな中で、彼はとうとう蜃気楼でも見たような気がした。

ありえない人が視野に入った。

ある女は砂の中で必死にもがきながら、彼に向かってくる。

「助けて――!誰か――!」

?!!

更に声を聞いたら、イズルの目は一気に覚めた。

その声も、ありえないものだ。

死んだ母親の姿を見て、声を聞いたのは、蜃気楼以外にどう説明すればいいのか?


「母」の後に、二人の筋肉男がいる。

筋肉男たちは「母」を追って砂漠に入った。

「母」は砂を掬って、男たちの顔に投げる。

男たちは砂を払う隙に先を急いだ。

「母さん!!」

イズルは体力の温存を諦めて、全力で「母」に走った。

「イ、イズル――!!」

「母」もイズルに気付いて、彼の名前を叫んだ。

「逃がすな!」

「捕まえろ!」

筋肉男たちは「母」のスピードより速い、このままじゃまずい!

イズルは方向を変えて近くにあるサボテンに行った。

そのサボテンの下の砂を掘って、砂の中に埋められたカラクリのボタンを押した。

「ドカーン!」

筋肉男たちの前に、砂が爆発した。

大きな穴があけられて、一人の男は足元を滑って穴に落ちた。


「母さん!」

「イズル!」

砂漠ダンジョンの中で、親子二人は強く抱きしめた。

「あのサボテンの下に硬い踏み台がある!そっちへ!」

再会に感動する余裕がない。イズルは母の手を引いて、一つの斜めのサボテンに走った。

「母」をサボテンの下の踏み台に立たせて、イズルはサボテンの下からリモコンのような機械を掘り出した。

それを持ってイズルは大声で筋肉男たちに警告する。

「頭をぶっ飛ばされたくないなら、そこに止まれ!」

話と同時に、イズルはリモコンのボタンを何個押した。

たちまち、筋肉男たちの周りの砂は相次ぎに爆発した。

強いダメージはないが、砂塵と崩れた地面は筋肉男たちの足を止めた。

「お前ら、闇社会の人間だろ。だったら、神農グループは何を作っているのか、知っているはずだ。そのものでお前らをあの世に送ってやってもいい」

「バ、バカなこと!ここはただの遊び場だろ……!武器なんて

あるはずがない!」

筋肉男――筋肉ウルフたちはイズル脅迫に動じない。ちょっとだけ舌を噛んだのはイズルの外見のせいだ。

彼たちがもらったイズルの写真は貴公子恰好の好青年だけど、目の前にいるイズルは乱れた服装と凶悪な目を持つ不良のようだ。同一人物とは思えない。

「……」

イズルは黙ってリモコンで操作した。

筋肉ウルフたちの頭の真上にスポットライトが何個爆発した。

「!!」

筋肉ウルフたちは慌てて頭を庇って移動する。

「領地に侵入する奴を許さない主義だ。ここはオレが作ったお城、もちろん防御措置が完璧。お城が壊されたら、建て直せばいい。お前らは?一度壊されてみたいのか?」

「……」

そろそろ次のシーンに進むべきと「母」は判断して、イズルの後ろから手を上げて、筋肉ウルフたちに合図をした。

筋肉ウルフたちはイズルの脅迫に怯えたふりをして、緊急出口のほうに撤退した。


「母さん、もう大丈夫!」

筋肉ウルフたちは視線から消えて、イズルはさっそく「母」の安全を確認する。

「母さんもあの爆発から逃げられたのか!どうやって?」

「話せば長くなるの。まず家に帰りましょう……」

「母」はまだ何かを言おうとしたが、突然に目が閉じて、倒れていく。

「!!」

イズルは手早く「母」を受け止めた。

深いため息をしてから、母を背負って、重い足取りを踏んで4階の休憩室に向いた。


イズルは「母」を休憩室のベンチに寝かせて、ドアをロックした。

「母さん……」

「母」の顔を見つめながら、小さな声で呼んだ。

「……」

「母さん、忘れたのか?母さんはオレのことを、いつも『イズルちゃん』で呼んでいた――」

「?!!」

「母」は危機を感じて、本能的にベンチから床に転がった。

目を開けると、背筋が凍る光景を見た。

イズルはナイフをベンチに刺した。刺す場所は、先ほど彼女の頸の位置だ。

「な、何をするの?!」

「母」は体を起こしながら後ずさった。

イズルのはスーツの裏から小さな拳銃を出して、そのまま自分の後ろに投げた。代わりに、カバンからロープを取り出して、凍りついた目で「母」へ一歩進んだ。

「母の姿を利用するだけじゃなく、こんな拙劣なお芝居までするとは。楽に死なせない」

「?!!」

こいつ、本気か?!

「母」——エンジェの手足は震えた。

それでも彼女は世間を見てきたつもりだ。

プライドのためでも負けたくない。

「け、けれどもね!偽物でも、あんたの母の姿なのよ!殺せるならやって見ろよ!母の姿の人を殺すなんて、悪魔じゃないの!あんたの母もきっとあの世で親不孝の息子に怒っているわよ!!」

「喋れるのは今のうちだ。ご自由に……」

イズルはさらに一歩前進。

「……わ、分かったわ!リカのためでしょ!」

「母」で攻めるのが失敗して、時間稼ぎのために、エンジェは別の話題を持ち出した。

「リカ?」

「あんた、彼女からあたしの悪口を聞いたでしょ!それは違うの!あたしこそ被害者なのよ!彼女は小さい頃から高飛車のお嬢様、ずっとあたしたちみたいな平凡な女の子をいじめていたの……たくさんの男にチヤホヤされているのに、わざとあたしの好きな人を奪ったのよ!騙されないで!リカはあなたを利用しているだけ!家に戻るために!」

わけの分からない言葉を連発する同時に、エンジェは密かに首元の緑の宝石を掴んだ。

「あの採点バカとお前のことはオレと関係ない。彼女は家に戻らないこそ困る」

イズルはもう一歩前進した。

「……!」

ふいと、エンジェはいい「交渉条件」を思いついた。

「そ、そうだわ!あんたの家族の死因を知りたくない!?犯人が分かるわ!」

「ほぉ、犯人は?」

エンジェの思った通り、その言葉を聞いて、イズルが足を止めた。

「犯人は……リカだ!すべては彼女のせいなの!彼女は家族の秘密任務に失敗して、その秘密を漏らしたの!だから、あんたの家族はその秘密を知った!万代家はあんたの家族を殺さなければならなかった!復讐するなら、リカを先に殺すべきなのよ!」

「!?」


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