「あいつら、全部ここに閉じ込めてやる。一か月、いいえ、半年だ……」
イズルは汗を拭きながら、砂から足を上げて挿して、一歩一歩苦労して前進する。
砂の下はボールプール、床は足の届かない深いところがある。
天井のスポットライトはまぶしい。人工の猛暑と柔らかい地面は体力を激しく消耗させる。
イズルは眩暈が続いている。
そんな中で、彼はとうとう蜃気楼でも見たような気がした。
ありえない人が視野に入った。
ある女は砂の中で必死にもがきながら、彼に向かってくる。
「助けて――!誰か――!」
?!!
更に声を聞いたら、イズルの目は一気に覚めた。
その声も、ありえないものだ。
死んだ母親の姿を見て、声を聞いたのは、蜃気楼以外にどう説明すればいいのか?
「母」の後に、二人の筋肉男がいる。
筋肉男たちは「母」を追って砂漠に入った。
「母」は砂を掬って、男たちの顔に投げる。
男たちは砂を払う隙に先を急いだ。
「母さん!!」
イズルは体力の温存を諦めて、全力で「母」に走った。
「イ、イズル――!!」
「母」もイズルに気付いて、彼の名前を叫んだ。
「逃がすな!」
「捕まえろ!」
筋肉男たちは「母」のスピードより速い、このままじゃまずい!
イズルは方向を変えて近くにあるサボテンに行った。
そのサボテンの下の砂を掘って、砂の中に埋められたカラクリのボタンを押した。
「ドカーン!」
筋肉男たちの前に、砂が爆発した。
大きな穴があけられて、一人の男は足元を滑って穴に落ちた。
「母さん!」
「イズル!」
砂漠ダンジョンの中で、親子二人は強く抱きしめた。
「あのサボテンの下に硬い踏み台がある!そっちへ!」
再会に感動する余裕がない。イズルは母の手を引いて、一つの斜めのサボテンに走った。
「母」をサボテンの下の踏み台に立たせて、イズルはサボテンの下からリモコンのような機械を掘り出した。
それを持ってイズルは大声で筋肉男たちに警告する。
「頭をぶっ飛ばされたくないなら、そこに止まれ!」
話と同時に、イズルはリモコンのボタンを何個押した。
たちまち、筋肉男たちの周りの砂は相次ぎに爆発した。
強いダメージはないが、砂塵と崩れた地面は筋肉男たちの足を止めた。
「お前ら、闇社会の人間だろ。だったら、神農グループは何を作っているのか、知っているはずだ。そのものでお前らをあの世に送ってやってもいい」
「バ、バカなこと!ここはただの遊び場だろ……!武器なんて
あるはずがない!」
筋肉男――筋肉ウルフたちはイズル脅迫に動じない。ちょっとだけ舌を噛んだのはイズルの外見のせいだ。
彼たちがもらったイズルの写真は貴公子恰好の好青年だけど、目の前にいるイズルは乱れた服装と凶悪な目を持つ不良のようだ。同一人物とは思えない。
「……」
イズルは黙ってリモコンで操作した。
筋肉ウルフたちの頭の真上にスポットライトが何個爆発した。
「!!」
筋肉ウルフたちは慌てて頭を庇って移動する。
「領地に侵入する奴を許さない主義だ。ここはオレが作ったお城、もちろん防御措置が完璧。お城が壊されたら、建て直せばいい。お前らは?一度壊されてみたいのか?」
「……」
そろそろ次のシーンに進むべきと「母」は判断して、イズルの後ろから手を上げて、筋肉ウルフたちに合図をした。
筋肉ウルフたちはイズルの脅迫に怯えたふりをして、緊急出口のほうに撤退した。
「母さん、もう大丈夫!」
筋肉ウルフたちは視線から消えて、イズルはさっそく「母」の安全を確認する。
「母さんもあの爆発から逃げられたのか!どうやって?」
「話せば長くなるの。まず家に帰りましょう……」
「母」はまだ何かを言おうとしたが、突然に目が閉じて、倒れていく。
「!!」
イズルは手早く「母」を受け止めた。
深いため息をしてから、母を背負って、重い足取りを踏んで4階の休憩室に向いた。
イズルは「母」を休憩室のベンチに寝かせて、ドアをロックした。
「母さん……」
「母」の顔を見つめながら、小さな声で呼んだ。
「……」
「母さん、忘れたのか?母さんはオレのことを、いつも『イズルちゃん』で呼んでいた――」
「?!!」
「母」は危機を感じて、本能的にベンチから床に転がった。
目を開けると、背筋が凍る光景を見た。
イズルはナイフをベンチに刺した。刺す場所は、先ほど彼女の頸の位置だ。
「な、何をするの?!」
「母」は体を起こしながら後ずさった。
イズルのはスーツの裏から小さな拳銃を出して、そのまま自分の後ろに投げた。代わりに、カバンからロープを取り出して、凍りついた目で「母」へ一歩進んだ。
「母の姿を利用するだけじゃなく、こんな拙劣なお芝居までするとは。楽に死なせない」
「?!!」
こいつ、本気か?!
「母」——エンジェの手足は震えた。
それでも彼女は世間を見てきたつもりだ。
プライドのためでも負けたくない。
「け、けれどもね!偽物でも、あんたの母の姿なのよ!殺せるならやって見ろよ!母の姿の人を殺すなんて、悪魔じゃないの!あんたの母もきっとあの世で親不孝の息子に怒っているわよ!!」
「喋れるのは今のうちだ。ご自由に……」
イズルはさらに一歩前進。
「……わ、分かったわ!リカのためでしょ!」
「母」で攻めるのが失敗して、時間稼ぎのために、エンジェは別の話題を持ち出した。
「リカ?」
「あんた、彼女からあたしの悪口を聞いたでしょ!それは違うの!あたしこそ被害者なのよ!彼女は小さい頃から高飛車のお嬢様、ずっとあたしたちみたいな平凡な女の子をいじめていたの……たくさんの男にチヤホヤされているのに、わざとあたしの好きな人を奪ったのよ!騙されないで!リカはあなたを利用しているだけ!家に戻るために!」
わけの分からない言葉を連発する同時に、エンジェは密かに首元の緑の宝石を掴んだ。
「あの採点バカとお前のことはオレと関係ない。彼女は家に戻らないこそ困る」
イズルはもう一歩前進した。
「……!」
ふいと、エンジェはいい「交渉条件」を思いついた。
「そ、そうだわ!あんたの家族の死因を知りたくない!?犯人が分かるわ!」
「ほぉ、犯人は?」
エンジェの思った通り、その言葉を聞いて、イズルが足を止めた。
「犯人は……リカだ!すべては彼女のせいなの!彼女は家族の秘密任務に失敗して、その秘密を漏らしたの!だから、あんたの家族はその秘密を知った!万代家はあんたの家族を殺さなければならなかった!復讐するなら、リカを先に殺すべきなのよ!」
「!?」