万代家最高権力会議、それは月一度に開催される
会議の場所は決まりがない。議題も毎回異なる。
七龍頭以外にも、議題の関係者が出席する。
リカの祖父――
今日の天気はとても快適。
お茶会の場所は、フォースグリーンビルの屋上ガーデンに選定された。
リカとマサルは招待されて、七龍頭の誰よりも早く会場で待っていた。
二人の席が同じテーブで、対面座りになっているけど、マサルは目線を七龍頭の座る大きいなテーブルに定着し、リカに一目も振り向かない。
七龍頭用の大きいなテーブルに六セットの茶道具しか置かれていない、椅子も六つしかなかったが、会議が始まる前に、従者はもう一つの椅子ともう一セットの茶道具を持ってきた。
「これは、まさか……」
一番早く着席した七龍頭は、シャンパン色のチャイナドレスを身に纏う中年女性。
やや膨らんでいる体だが、動きが優雅で、気質が華やか。年齢より若いスタイルの服を着ていても違和感がない。
女の名前はシャングリ。七龍頭の中では陽キャラ、お話好きな部類だ。
「先ほど、大宇さんは今回の会議に出席される連絡がありました」
椅子を並ぶ従者はそう答えると、もう二人の七龍頭が会場に入った。
「ほう、それは、いいことですね」
作りもののような笑い声をあげたのは先頭を歩く
イズルの家族とやり取りをして、リカの異世界からの帰りを目撃した男だ。
落合は面長で、目の下に大きなクマがついている。肌色が黒いというより黒黄色っぽい。老化の早い中年に見える。
その声も気力のない渋いもの。全身から陰気が滲み出る。
彼と対照になったのは、その後ろを歩く老人。
落合より二十歳年上なのに、落合よりも元気に見える。
髪が真っ白だが、一本も乱れずきっちりまとめられている。痩せた体もよく伸びていてい、とても60歳後半に見えない。
先生と呼ばれるだけの冷静さと落ち着きがあり、軽々しい発言を一切しない。
七つの椅子と七セットの茶具を見て、白先生は何も言わず、微笑んで着席した。
それから、また三人の龍頭が前後に会場に入った。
一番年上で、侍女に支えられて席に入ったのは「ヤナギ様」と呼ばれる老婦人。七龍頭の役職に年齢の制限がない。老婦人はもう90を超えているが、まだまだ引退する気がないようだ。
ヤナギ様の隣の席に入った龍頭はまた一人の老人。「王さん」と呼ばれる70代の男。誰も彼の本名を知らないと言われている。家で「
高齢にもかかわらず、誰に対してもくだける態度で、かなりのお喋り好き。
王さんは七つに戻った席と茶具を見たら、さっそく喋り出した。
「こんな重要なこと、事前に教えてくれればよかったのに。お祝いの準備でもしたんだよ。大宇さんから何週間も連絡がなくて、心配してたぞ。彼の部下だけじゃなく、うちの部下もそわそわしている。いろいろ大変だったよ。何と言っても、龍に頭がないとだめだからね」
存在感の強い二人の高齢者の前に会場に入ったものの、音もなく着席した男がいる。
その男の名は「
七人の中で最後に入職した龍頭のせいか、大体な場面で発言を控えている。
ある意味、落合よりも陰気なキャラだ。
「大宇さんは戻ってきたら、今日のいいことは三つに増えますね。ねぇ、ヤナギ様?」
六人が揃ったところで、シャングリは笑ってヤナギ様に話しをかけた。
ヤナギ様はただ「うん」とうなずいて、一応賛同を示した。
それを聞いた落合は冷ややかな口調で会話に入った。
「四つじゃないのか?」
そう言いながら落合はリカに目線を投げた。
「うちの継承人は任務を完成する同時に、継承人の地位も固めました。首席後継者のことに悩む必要はもうありません」
リカの眉が小さく動いたが、そのまま落合と目線を合わせた。
先に目を避けるのは落合。彼は視線先をマサルに移した。
「継承人の問題の解決、希有人材の確保、『ガイアリング』の完成、それに、首席龍頭の復帰、四つのいいことで間違いはありませんよ」
マサルは落合の合図を受け取って、愛想よく微笑んでその話に続いた。
「僕の仕事が錦上に花を添えることになり、とても嬉しく思います。これも、すべては皆様のおかげです」
「謙遜しなくていい。こんなに早く『ガイアリング』のような複雑な施設を完成できるのは、マサルくんとマサルくんが率いるチームのみんなが一生懸命努力した結果だ」
称賛する笑顔だが、落合の顔から浮かび上がると、どうも気味悪かった。
「そうだ。報告によれば、エンジェの意見は大きく働いたな。確かに、彼女はできる子だ。彼女にマサルくんの次のハイスコアをつけることになった。これでマサルくんは継承人ランキングで4位、エンジェは7位まで登る。お二人はこれからも協力して、家のために尽力することを期待しているぞ」
落合の話を聞いて、ヤナギ様と王さんの表情が少し引き締まった。
マサルは名義上で天童大宇の孫。天童大宇の力があったからこそ、今日の地位に上った。正式な婚約はないが、彼がリカの婚約者で、将来の夫であるのは、周知のことだ。
一方、エンジェはリカの親友。リカのおかげでいつも美味しいスコアを手に入れていた。
リカの任務が失敗した件に関して、この二人が一枚を噛んでいるのは、みんなも知っている。
深く追い詰めなかったのは、彼たちは七龍頭と直につながっているから。
天童大宇が倒れた後、上層部の情勢は微妙に不安定になっている。そんな中で、各派閥のバランスを破壊するのは家の利益につながらない。
なのに、落合はリカの前でマサルとエンジェの「協力」を誉めた。
これはリカ、そしてリカの後ろの天童大宇の顔に泥を塗るようなことだ。
もしこの時に天童大宇が現れれば、落合でもまずいだろう。
「ふふ、若者ですから、まだまだ伸びると思いますよ。私たちは全力で応援するから、みんな頑張ってね」
シャングリは朗らかに笑って、雰囲気をほぐした。
「もうこんな時間だ。大宇さんはまだなのか?場所を間違っていないよね?誰か、確認してくれ」
王さんは屋上エレベーターの方向を見ながら、従者を招こうとしたら、エレベーターの扉が開かれた。
一人の従者はエレベーターから小走りで出て、七龍頭のテーブルの前で報告をした。
「先ほど連絡がありまして、大宇様の車椅子に不具合があって、今日の出席はお見送りになりました」
報告を聞いた全員の顔色が複雑になった。
短い間隔を置いたら、落合だけが不気味な薄笑いをした。
「これは、残念ですね。四つのいいことは三つになりました。シャングリさんのほうが正しかったんですね」
「落合さん、お時間になりましたので……」
雰囲気がまたまずくなったのを嗅いだ東山は、最初の一声を発した。