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107 恋の援護?

***

昨日の夜、リカはイズルことが心配で、両親に電話をした。

両親はただリカの新しい部下を見たい、安心しろとリカに伝えた。

両親がそう言った以上、リカも問い詰めなかった。

その代わりに、青野翼あおのつばさに連絡を入れて、対面を要求した。

青野翼のいるオフィスについたら、リカも余計な話を飛ばして、さっそく本題に入った。

「わざわざ異常天気まで作って、両親に合うチャンスを作ったのね。一体なんのために?」

「……」

リカの質問を予想したように、青野翼は驚くこともなく、ニコニコ返事をした。

「もちろん、リカさんとCEOの恋のための援護です」

緑縁りょくえんさんは新世界とつながりを持っていることを忘れていないよね。あなたの直属上司が分からないけど、緑縁さんに頼んで、あなたたちのBOSSのところにクレームを入れましょうか?」

「!!」

今までどんな脅かしにも本気に動揺しなかった青野翼だが、その一言に小さく震えた。

「そ、それは……恩に仇を返すようなことだと思います。公正で優しいリカさんがすることではありませんよ」

「なんの恩?」

リカの鋭い視線に刺されながらも、青野翼はもう一回自慢そう胸を張った。

「お二人の恋の成就です」

「……」

リカはその場で電話をかけた。

「緑縁さん、頼みたいことがあるけど……」

「CEOのサバイバルゲームのことを知りたくないですか!?」

青野翼の自慢が瞬間に崩れた。

やむを得ず、隠し札を一枚出した。

「ご両親との話の内容はまだリカさんに伝えられないけど、その代わりに、サバイバルゲームのことを教えてあげられます。それで勘弁してほしいです」

でも、リカはその交渉条件に満足しない。

「両方も教えてもらおうと言ったら」

「僕はこの場で自決します」

そう言って、青野翼は引き出しから一本のカッターを取り出して、その刃を自分の腕につけた。

「……」

(この手しか使えないのか……)

リカは密かにツッコミをした。

「上司の計画を潰すこと、BOSSのご機嫌を損なうこと、どっちも死に至る罪だから……せめてこのCEOのオフィスを鮮血で染め上げて、ささやかな報復をさせていただきましょう」

「やめなさい、気持ち悪い……」

リカの態度が緩んだら、青野翼は更に勧めた。

「リカさん、僕の提案はリカさんに有利なものですよ。うちの会社は信義を大事にするところです。CEOとまだ合作関係がある以上、お二人に不利なことをしません。ご両親に話した内容はそのうちに分かるでしょう。せっかくのチャンスなので、CEOのためにサバイバルゲームの情報を入手したほうがお得だと思いませんか?」

「……分かった。あなたの勝ちよ」

青野翼の人柄が気持ち悪いが、言っていることは理にかなっている。

リカが彼を追い詰めたのも、イズルの安全を確保したいからだ。

新世界はイズルに害するつもりがないなら、一歩譲っても問題ない。

それに、サバイバルゲームの謎が多い。

何か情報を聞き出せるなら、それも悪くない選択肢だ。


「CEOの家系や、異能力の封印のことなら、リカさんはすでにご存じでしょう」

「渡海家はもともと神の血を受け継げた『炎帝えんてい一族』の末裔。炎帝一族を離脱してから、万代家の力を借りて、自分の事業を立ちあげた。離脱の条件として、子供たちの異能力を封印しなければならない。でも、イズルの封印はあの事故によって解けられた。そして、あなたたち最近の操作によって、完全に取り外した。そうでしょ?」

リカは簡単にイズルの家系を整理した。

「その通りです。CEOがうちのサバイバルゲームに選ばれたのも、その家系が原因です。うちの会社は、異能力の応用だけではなく、もっと本質的な面で異能力を解明しようと努力しています。例えば、生まれつきの異能力を持っているのに、時間や環境の変化によって、能力を失う事例もありますよね」

「……」

リカが青野翼の話から連想した最初の事例はイズルではなく、彼女自身だった。

「うちの会社は、そのような人間たちの能力の再覚醒させるために、今回のイベントを設けて、モニターたちを招待したのです」

「つまり、あのウィングアイランドは人の異能力を上げるための施設だよね。でも、異能力上げるだけで終わらないよね?」

「異能力が順調に上げられたモニターの中から『協力者』を選出します」

「協力者?」

リカは覚えている。

出会った当初、青野翼は「『新登場』がとあるプロジェクトの協力者を探している」云々を言った。あれも本当なのか?

戸惑うリカを見て、青野翼はちょっと得意げに笑った。

「リカさん、僕はいっぱい嘘をつきましたけど、あのサバイバルゲームについて、そんなに嘘をついていません」

「新世界は、確かにあることを計画していて、協力者を探しています。でも、普通に各異能組織に声をかけても、相手に疑われ、僕たちの欲しがるモニターをもらえないでしょう。だから、あの島を作って、みんなを誘ったのです」

「島にある異能力を上げる技術を餌にして、各組織から欲しがるモニターを送ってもらうってこと?」

「さすがリカさん、話が早いですね」

青野翼は大げさに、リカの推論を認めた。

でも、リカはまだ疑問がある。

「それでも、各組織はあなたたちが望んだ人間を素直に差し出すと思わない」

「リカさん、例えばの話だけど――あなたは魔力の強いお宝を持っています。でも、何らかの原因で、そのお宝は魔力失って、ただの荷物になりました。こういう時に、それの魔力を回復させるチャンスがあります。多くの人は、宝の持ち腐れをするより、多少危険を犯しても、お宝の復活を選ぶのでしょう」

「……」

異能力を上げる技術、それは万代家が長年求め続けているもの。

本当にそれを入手できるのなら、どんなモニターも喜んで差し出すのだろう。

だが、新世界はそれでいいのか?

あんな技術を餌にして、万が一、ガイアリングのように、ライバル組織に盗まれたら……

リカの次の疑問がまだ口から出ていないのに、青野翼がデスクに置いているスマホが赤い光を点滅し始める。

青野翼はスマホを取って、画面をリカに見せた。

「CEOのお宝が目覚めたようです」

画面にあるのは、いきなり上昇する線状グラフ。

「!?」

「僕たちの観察によると、CEOの異能力の強弱は、彼の危機意識と強く関連しています。今は、どんな危機に遭遇しているのでしょうね」


リカが急いでオフィスを飛び出したら、青野翼は長い息を吐いた。

「確かに、すでに甘さを味わったものは一度手にしたお宝を差し出してくれないでしょう。あなたを取り戻すために、本当に苦労しましたよ――お姫様」


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