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第8話・思い出01


「やっやめてくれえぇえ!!

 俺が悪かった頼むぅ!!

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 いいぃいいいっ!!」


あれは俺が中学生2年生くらいの頃―――


Kという図体のデカい同級生がいた。

コイツは粗暴というか、ガラが悪く……

その時ですでに身長は175cmを越えていて、

体格差があるのをいい事に、傍若無人ぼうじゃくぶじん

振る舞っていたのだが、


当初、他の男子の同級生だけに向けられていた

それは―――

女子を脅すのにも使われるようになっていった。


机を叩き、壁をガンガン蹴り……

それで女子が怯えるのを見てニヤニヤと

笑っていたのだが、


さらにエスカレートし、付き合えだの

俺の女になれだのと言い始めたので、


「いい加減にしろ。


 もしお前がそれ以上やるなら、俺はお前の

 腕なり足なりにしがみついて―――

 指の1本、肉の一片食いちぎってやる」


俺がそう言ってヤツの前に立ちはだかると、

これが答えだというように、Kは俺の顔面を

拳で思いっきり振りぬいた。


……正直言うと怖かった。


親父から武術の手ほどきを受けていたが、

それだけに体格差による戦力差は骨身に染みて

知っている。


手足にうまく力が入らず、口の中が切れて

鉄分の味がして、


心臓や胸の周囲が締め付けられ、吐き気が

しそうな緊張感。


だがそれでも、俺はヤツの腕をつかみ―――

指を噛む事に成功した。


「っだあコラ!!

 ガキかよてめぇ放せ!!」


もう片方の腕でKは何度もパンチを浴びせて

くるが、それでも俺はくわえて放さず、


そして指を食いちぎるという事が本気だと

わかったのか、


「やっやめてくれえぇえ!!

 俺が悪かった頼むぅ!!

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 いいぃいいいっ!!」


そう泣き叫びながらヤツは失禁。

さすがに騒ぎを聞きつけ、先生たちが教室に

駆けつけ、


彼らが見たのは、口を血だらけにしている

俺と、だらしなく放心状態で失禁している

Kの姿。


そして俺とKはそのまま病院へと運ばれ……

詳しい事情聴取を受ける事になり、


それぞれの保護者に連絡が行き―――

俺の親父とKの両親も病院へとやって来た。



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