「あー、K君のご両親もご一緒でしたか。
この度は大変本当に何て言ったらいいか……
私の指導不足でして。
ただまあ、今回は
あまり事を荒立てないで。
2人ともまだ若いし、未来があるんですから」
小太りのその40代くらいの担任は、ヘラヘラ
しながら話を進めるが、
「なあ先生。
あんた、この状態の
お互い様って言えるのかい?」
親父の言葉にギョッとなりながらも、
彼は俺の方を向いて、
「み、光郎君もだね。
K君の事は聞いたけど、どうして先生に
相談しなかったんだ?
こんな事をしないでも、もっと他にいい
解決策があったと思うんだよ」
担任はおろおろしながらも、何とか言い訳を
しようと俺に食い下がる。
俺は口の中が切れた状態ながらも、何とか
声を発し、
「先生―――Kが散々同級生に暴力を振るって
いるのを見てきましたよね?
それ、全部見て見ぬふりをしてきたじゃ
ないですか。
そんな人に相談して何の意味があります?」
「い、いやそんな事は……
それにあれはただの遊び、じゃれ合いみたいな
ものだろう?」
さすがに知らなかったとは言えないと判断
したのか、やんわりと認める方向になるが、
親父がフーッ、とため息をついて、
「あのさあ、先生。
あんたボクシングって知っているか?
団体にもよるが、少なくとも体重が2kg
違ったら、階級は絶対違うものになるんだよ。
光郎とKさんの息子さん―――
体重差は25kg? 30kg?
身長差は10cm? 20cmか?
どんな格闘技でも、そんなに差があったら
絶対対戦は組まねぇよ」
そこで親父はK両親の方を向いて、
「あなた方の息子さん、確か今身長175cm
って言ってたっけ。
すごいよな。俺より上じゃん。
それが中学校の同級生の中だったらほとんどの
生徒と、大人と子供の差くらいあるよな。
暴れたら誰も手をつけられねぇ。
そして現にそうなっていたと」
今度は担任の先生の方へ視線を向けて、
「それでアンタは見て見ぬふりをするし、
学校ってのは異様に警察の介入を嫌がる
よなあ。
何? 『ガッコウ』ってのは……
そういう無法地帯を生き延びるための
知恵や訓練を学ぶための場所かい?
だったらきちんとそう言ってくれ。
それなら俺は―――
ちゃんと光郎に言ったよ。
どれだけ武術を使っても構わん、ってな。
こうなる前にさ」
親父は最後に俺の方を向くと……
担任とK両親は顔を伏せた。