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第11話・ルールは公平に01


「……同じ、だなあ」


過去の回想から戻って来た俺は、バダールの

股間を少し外して踏み抜いた足を元に戻す。


すでにヤツは気絶しており、舌をだらんと

口の外に垂らしていた。


結局、Kのヤツは―――

そのまま中学校には一度も登校せず、

卒業式を迎え……


担任は交代となり、その後は何事もなく

平和な学生時代を送れたと思う。


ただ一度だけ、俺を事件の時に事情聴取した

刑事さんらしき人が、卒業式の前日に家に来て、


「全国に引きこもりってのは数多くいるが、


 いじめっ子が相手から反撃を1回受けた

 だけで、引きこもってしまう―――

 そういうパターンもある」


そんな事を話して帰っていった。


どういうつもりでそういう事を言ったのか……

恐らくはKの事を言っていたのだろうが。


『よくやった』という事か、それとも、


『人一人の人生を潰した、その責任は背負って

生きていけ』なのか。


残念ながら後者には、俺は全く同意出来ない。


Kが相手の都合を考えて暴力を振るって

いたか?

女子のトラウマになるかも知れないなんて、

思って脅していたか?


相手の事を一切考えないヤツの事を、

どうしてこちらが考えてやらなければ

ならない?


同じ事だ。

このバダールも、Kも―――


相手より力があるから好き勝手出来る、

というルールで動いていたのなら、


ここの召喚者たちを自分勝手にもてあそび、

女性を毒牙どくがにかけてきたというのなら、


お前だって、自分より力が強いヤツが

出て来た時……

踏みにじられる事を覚悟するべき

だったんだよ。


雨霧あまぎりくん、あなた……」


武田さんの声で我に返り、彼女に振り向く。


「殺してはいませんよ。

 それに言ったでしょう?


 この人には聞きたい事がある、って」


俺の答えに彼女はホッとした表情になり、

周囲は歓声に包まれた。



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