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第20話・内通者


「うふふ……

 本当に役者よねえ、あなた」


「だから言ったろ?


 こういう事は、中途半端に隠さない方が

 いいんだよ。


 後は普段の信用ってヤツで決まるからな」


王城の一室で―――

銀髪ロングの王女と、ボサボサ髪の

10代後半の若者・島村が、くだけた

口調で語り合う。


「今回はまだ子供のように見えたが……

 どうかね?」


魔導師ふうの男、グリーク宰相が、

念を押すように彼に問うと、


「あぁ?

 俺のこぶしはよう、女子供だって容赦ようしゃ

 しねーんだ。


 老若男女ろうにゃくなんにょ平等パンチ、ってねぇ♪」


ゲラゲラと笑う島村に同調し、2人も

口元を歪めて微笑ほほえむ。


「では問題は無さそうね。


 その子もちょっと興味はあるけど―――

 秘密を知った以上、生かしてはおけない

 のよねえ」


「バダールがやられたんだろ?

 って事は、『怪力パワーストレングス』か

 それと同等以上のスキルの持ち主、

 って事になるけどよ。


 ま、俺にゃ何の問題にもならねえけどな」


ドヤ顔で王女に答える彼に、グリークは

口を開き、


「ただ、どのようなスキルかは私の目を

 もってしても―――

 判明出来なかったのだ。


 『怪力』だけではなく、『反射リフレクト』も

 持っているように見えた……


 対応は可能か……?」


今度は戦力について召喚者の若者に問うが、


「何を持っていようが関係ねーだろ。


 俺のスキル―――

 『封印ロック・アウェイ』にかかっちゃあよぉ。

 それで何匹もヤって来たんだ。


 サクっと行って処理して来るって」


この島村という若者は……

実はアスタイル王国に内通している

召喚者であり、


不都合な秘密を知った同じ召喚者たちを、

何人も口封じしてきていた。


「それは頼もしい、が……


 実は今回の召喚者は、私の作った

 システム外である可能性があるのだ……


 出来れば生け捕りにして欲しいのだが。

 可能かね……?」


「報酬は?」


さも当然というように彼は返し、


「あらぁ?

 今回、わらわの体はいらないの?

 もう飽きちゃったんですか?」


アンク王女はそう言いながら、島村に

胸を押し付けるようにしがみつく。


「もーちょっと刺激が欲しいところだな。

 アンタの姉妹も一緒に頂けたらいいん

 だがよ」


「欲張りですわねぇ。

 でも確かに、わらわ1人じゃもたない

 くらいに、激しいんですもの……♪


 王族の中から何人か用意しておきます?」


「お!

 そりゃーいいな。


 じゃあなるべく生かして捕まえるように

 するからさ。

 五体満足でなくともいいんだろ?」


彼はニヤけながらグリークの方に

振り向くと、


「……まあ、こちらとしては情報さえ

 聞ければいいですから……


 ただ相手を舐めない方がいいですよ。

 くれぐれも慎重に……」


「へいへーい♪」


と片手をひらひらとさせたかと思うと、

若者はその手で王女のお尻を撫でて、


「キャッ♪


 んもう、気が早いですわ。

 その気にさせたのなら、早く帰って来て

 くださいね」


「おーよ、待たせねーって」


そう言って彼が出て行ったあと―――

アンク王女は顔をしかめ、


「ったく、あの性欲サルめが……!

 調子に乗りおって!」


悪態をつく彼女に宰相は両目を閉じ、


「……こう言っては何ですが……

 よくお相手出来ますね?」


「わらわが体を提供すれば、それが一番

 安上がりであろうて。


 わらわは何も失ってはおらん。

 あのような者は、適当に肌を重ねて

 制御するに限るて」


事務的に王女はそう答えると、ソファに

腰掛けて飲み物を口にした。



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