「どうですか?
助かりそうですか?」
「命だけは何とか……
ただ高度な治癒を使える回復スキルを
持つ人は、ここにはいませんからね。
本格的な治療は、王城に戻ってから
やってもらうしかありませんよ」
俺は包帯でグルグル巻きになった島村を
前に、彼の治療に当たっている人たちと
話し合う。
「自分で火を着けてどこかに逃げたって……
しかもどこからも脱出出来ないとわかって
いたのに?」
事情だけ聞くとどこの自殺志願者だと
言いたくもなるのはわかるが、
実際、そうとしか言いようがないからなあ。
あの時、島村は方々に火を着けた後、
俺に火も効かないとわかった途端、
とにかく俺から遠ざかるために逃げたの
だろう。
ていうか、散々油で自分自身転びまくったん
だから、その火が自分にも燃え移るという
発想は無かったんだろうか。
「そういえば屋敷は―――」
「水魔法の使い手が何人か町にいたので、
何とか
問題は火元というか、火事の原因の彼が
逃げ回ってくれたおかげで、救出が
遅れてしまった事だけど」
セミロングの髪をした眼鏡の女性が、
ため息をつきながら語る。
「でもこうなった、という事は……」
「まあ和解や謝罪のために来た、という
わけでは無いでしょうねえ」
他の召喚者組も、複雑そうな表情で
ベッドの上の島村を見つめる。
「これからどうするの?
「そうですね。
ちょっと外で話しましょうか」
武田さんの続けての問いに、俺は島村が
治療を受けている建物を離れ、武田さんと
2人きりになり、
「多分、切り札的な人選で彼を送って来たと
考えられますから―――
もっと切り札のような存在をまた
送って来るか、
それとも事態収拾のため、グリークより
上の人間が出て来るか……
というところですね」
俺の答えを聞いた彼女はうなずく。
「……やっぱり、島村さんは……」
「もう何人も殺していると、自慢げに話して
くれましたよ。
もみ消す役割がいるとは思って
いましたけど、同じ召喚者とは」
「よく平気でいられるわね?
……っ、ごめんなさい……」
恐らく、目の前の事実に耐えられない
自分と―――
妙に冷静な俺と対比してしまったのだろう。
実際、俺の中身は立派な成人男性なのだが、
子供なのにヘンに割り切っている性格だとか
思われているのかも知れない。
ただそれを証明したり説明する事も
出来ないので、
「父親が道場主をやっていたって、
前にお話しした事ありませんでしたっけ。
それ絡みでまあ、暴力沙汰とかの話も
よく聞いてましたので、それである程度
耐性が出来ているのかも」
「あっ、そ、そういうものなのね?」
多分、無理やり自分を納得させて
いるんだろうなあ、と思っても
口には出せず。
それから、まだ焼け焦げた匂いのする
屋敷に戻るわけにもいかず……
しばらくは町の宿屋を転々として、
寝泊まりする事を余儀なくされた。