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第25話・次の手


「島村からの連絡が途絶えた?」


「……はい。


 『ゴミ捨て場』の様子を間者に調べ

 させましたが……」


王城の一室で―――

銀髪ロングの王女と、魔導師ふうの男が

小声で語り合う。


グリーク宰相さいしょうから書面を受け取った

アンク王女は、それを読み進めていく

うちに、眉間にシワを寄せ、


「バダールが使っていた屋敷……

 そこを例の召喚者が使っていた、

 それは別にいいのだけれど。


 それを燃やしたって―――

 あのバカ猿、何を考えているの!?」


「しかもそれで逃げ遅れたようでして……


 今はあの『ゴミ捨て場』の町で、

 治療を受けているという事です……」


ハー……と深くため息をつくと、王女は

ソファに腰掛けて、


「例え同郷の人間でも『後始末』が

 出来る、汚れ仕事を引き受けるから

 重宝してたのよ!?


 それすら出来なかったら何の価値も

 無いじゃないの!

 せっかくこの高貴な体を許してやったと

 いうのに……!」


彼女に取っては予想外だったのだろう。

ややヒステリックになりながら、困惑の

表情を浮かべ、


「それで例の召喚者は?

 少しはダメージを与えられたのかしら?」


「……詳細は不明ですが、何事も無かった

 かのように、町で過ごしているとか……


 想定以上ではなく……

 想定外の事が起きている、と認識した

 方が良さそうです……」


これまで、島村は『仕事』を仕損じた事は

無かった。

アンク王女やグリーク宰相はこの手の

『緊急事態』が生じると―――

島村を差し向けて、『解決』して

来たのである。


いわば100%の成功率を誇る切り札が、

今回初めて失敗したわけで、


「でもまぁ、そろそろ手駒も代える時に

 来たのかも知れませんわね」


「……と言われますと……?」


宰相は王女を下から見上げるように伺う。


「あの性欲サル、わらわだけで満足して

 いればいいものを―――

 最近は調子に乗って、いろいろと要求して

 いたのよ。


 特に壊す目的で女子供の奴隷を要求する

 ものだから……

 王族の中にも危険視する声が上がって

 来ていたの。


 ちょうどいい『交換時期』だわ」


「……と言われましても……

 島村ほどのスキルを持つ召喚者は、

 なかなか……」


そこでグリークの表情はハッとなって、


「……まさか、アンク王女様は……」


「島村を退けたほどの召喚者なら、

 立派な『交換品』になるでしょう。


 交渉自体は出来そうですし―――

 わらわが直接乗り込んで、とりこにして

 来ましょう。


 わらわのスキル、『魅了ファスニーディング』で……!」


そう言って王女は妖しく笑うと、同時に

宰相は目を伏せた。




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