「ええと、まずですね」
「ゆっくりでよろしいですよ。
ちゃんと聞いておりますから―――」
銀髪の王女が、余裕の表情で俺の言葉に
耳を傾ける。
俺が子供っぽい態度になったからか、
護衛の兵士たちもニヤニヤしながら
見守っているが、
そして俺は意を決したような顔になって、
「まず、僕にした事を余さず、
国内外に公表してください」
「……え?」
一瞬、時が止まったかのように室内に
静寂が訪れ、
「僕をいきなり別世界から誘拐した事。
有用なスキルが見られないからと言って、
追放同然で王城から追い出した事。
その時、僕を連行していた兵士が
剣で暴力を振るおうとした事。
行き付いた先でも、バダールという
監視役によって、暴力を振るわれそうに
なった事など―――」
予想外の方向に話が飛んだのか、
目を丸くしていたアンク王女が気を
取り直して、
「お、お待ちください!
それについては謝罪し、十分な補償も
与える用意があります。
ですが、それを国内外に公表するなど、
国家の信頼、そして他の召喚者たちに
対する影響が余りにも……!」
「あと、そうですね―――」
「まだ何か!?」
余裕だった彼女の表情はすっかり消え失せ、
逆に困惑の度合いを増していく。
「役立たずと断じた召喚者たちを、
一か所に集め、そこを『ゴミ捨て場』と
呼んでいた事。
バダールのような男に暴力を振るわせて
支配し、さらに女性は彼に
いた事。
島村を使い、これに逆らう者や不都合な
事実を知った者を密かに始末していた事。
これらも国内外に公表してもらいます。
もちろん、王城にいる召喚者たちにも、
です」
それを聞いたアンク王女は、しばらく口を
パクパクとさせていたが、
「そ、そんな事をすれば我が国は」
抗議するように彼女は立ち上がるが、
「あと、ちなみにこれは……
僕と話し合いをするための前提です。
これらが通ってから、今後の条件について
話し合いをしたいと思っておりますので」
俺のその言葉を聞いた途端、力なく
ソファにへたり込む。
『貴様!』『不敬過ぎるぞ!!』と、
護衛の兵士たちが騒ぎ始めるが、
彼女は片手を挙げてそれを止め、
「い、いったん―――
持ち帰って検討してもよろしい
でしょうか?」
「はい。それと……
先ほどから何らかのスキルを僕に
使っていると思われますけど、
この世界のスキルは僕に効かない
ようなんですよね。
バダールも島村も、それに頼って
僕に倒されましたから。
あ、それと―――
ちょうどいいので、島村は持ち帰って
ください。
こちらでは治療に限界がありますので」
「わ、わかり……ました」
そしてフラフラと立ち上がる王女を、
護衛の兵士たちが支えるようにして
退室させ―――
後には俺だけが部屋に残された。