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第28話・アンク王女03


「…………」


「……待遇改善ではなく、情報公開、

 ですか……


 国内外、召喚者も含めて……」


王城の一室で―――

長い銀髪の王女と、魔導師ふうの男が

語り合う。


特に王女の方は憔悴しょうすいし切った表情で、


「当人への扱い―――

 これは行き違いや、兵士たちの暴走が

 あったとまだ言い訳出来ます……


 バダールの事も、彼に罪を全て着せれば

 何とか……


 ですが『ゴミ捨て場』や、島村の事は

 どう言い訳しても無理です……!

 無能な召喚者どもや不満のある者を、

 虐待、処分していた事など……!!」


ガリガリと髪をかきむしる彼女に、

グリークはため息をついて、


「……落ち着いてください、アンク王女様。


 別にそれを約束させられたわけでは

 ないのでしょう……?」


すると彼女はキッと彼をにらみつけ、


「そもそもお前の責任じゃぞ、グリーク!!


 『スキルが通用しない』―――

 そんな召喚者をどうするつもりなのだ!?


 いっそ王城の召喚者たちを味方につけ、

 あやつにぶつけるという手も……!」


王女は王女なりに打開策を模索するが、


「……それは悪手かと……


 交渉そのものはするんですよ、あの

 少年は……


 そこで召喚者同士いったん話し合いを、

 という流れにでもなったら……

 最悪、彼らも向こうの味方になる

 可能性が……」


「ではどうしろというのだ!?」


ヒステリックに叫ぶアンク王女様に、

グリークは真剣な表情で向き合い、


「……何も彼は、やった事を全て認めろ、

 とまでは言っておりません……


 公表しろ、と言っているのです……」


「それは、認めるのとどう違うのだ」


王女が聞き返すと、


「……公表自体はします……

 ですが、こちらの関与は可能な限り

 出しません……


 向こうもそこまで望んではいない

 でしょう。

 もしそうであれば、そのように条件を

 付けているはずです……」


「ふむ」


アンク王女は少し落ち着いてきたようで、

そのまま耳を傾ける。


「……バダールの蛮行ばんこうは……

 すでに彼の暴走という事で、王城の

 召喚者たちにも伝えております……


 島村に関しても……

 『私たちがひそかに調べた』結果、

 独断で殺戮さつりくを楽しんでいた……

 という事に……


 ……今の彼は満身創痍まんしんそういです……

 どうとでもなるでしょう……」


「では、『ゴミ捨て場』に関しては

 どうする?


 さすがにアレに王家が関わっていないと

 するのは、難しいと思うが」


グリークは眉間に人差し指をあてて、


「……そこは王家の末端から、数名ほど

 スケープゴートを出して頂く他あります

 まい……


 ……仮にも王家から生贄いけにえを差し出せば……

 彼も溜飲りゅういんが下がるでしょう……」


「なるほどのう。


 まあ、名ばかりの王族など腐るほどおる。

 何匹か犠牲になってもらうか。


 その人選はわらわに任せるがよい」


「ハハ……ッ」


王女の言葉に彼は深く頭を下げた後、

頭を上げて彼女と目が合った瞬間、

どちらからともなく口元を歪めた。



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