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第29話・謝罪01


アンク王女様の訪問から10日ほど

経った頃―――

王城から使者がやって来た。


俺が出した条件、それらを全て認める、

との事だ。


例の、バダールの屋敷だった建物の

応接室内でその通達を受け、


使者は用事を終えるとさっさと

帰っていった。


「あっさりと認めたのね?

 信じられない……」


武田さんが、条件が通った事について

疑問の声を上げる。


「バダールを倒し、グリークがどんな

 スキルを持っていたかは知りませんけど、

 その交渉にも失敗しました。


 その後、切り札であろう島村も返り討ち。

 アンク王女様は、恐らく精神系のスキル

 でも持っていたのでしょうが―――

 それも通じなかった。


 なのでこれ以上、状況が悪くなる前に、

 というところでしょうね」


俺の言葉に彼女はきょとんとしていたが、


「すごいわね、雨霧あまぎり君は……

 それも武術を学んでいたからなの?」


本当の年齢は外見より10才以上、

上だとはなかなか説明出来ず。


「でも、状況が悪くなるって言っても、

 これで王城の召喚者たちは全部バレて

 しまう事になるのよね?


 彼らが怒って、報復とか始めたら」


続けて武田さんは懸念けねんを口にするが、


「島村の話では、この町の件は全て

 バダールの独断、という事にされて

 いたようですし―――


 恐らく、島村自身の件も彼1人の仕業、

 という事になるでしょうね。


 念を入れるとすれば、彼に協力者が

 いたという事にして……

 その人物を生贄いけにえに差し出すでしょう」


「でもそれでいいの?

 雨霧君としては、これまでの

 アスタイル王国の悪事を、全て公表

 させる事なんでしょう?」


彼女が聞き返して来た事について、

俺は首を左右に振り、


「さすがにやり過ぎると、王国そのものを

 崩壊させてしまう事になります。

 それだと混乱させてしまうだけです。


 無秩序状態になるまでは望んで

 いませんので、僕は」


そこまで聞くと、武田さんははぁ、と

ため息のように大きく息を吐いて、


「そうね。

 バダールのような存在さえいなければ、

 ここので生活もそんなに悪いものでは

 なかったし。


 待遇改善さえしてもらえれば、

 多分みんなからも文句は出ないと思うわ」


「まあ、取り敢えず一緒に王城に出向いて、

 彼らの謝罪を受け入れましょう。


 どんな言い訳をするのか、楽しみでも

 ありますし」


「……ねえ、雨霧君ってまだ

 12・3才よね?


 まるで同年代か年上の人と話している

 気分なんだけど―――って、


 一緒……って?」


「え? 武田さんにも付き合って

 頂きますよ。


 だってこの町の住人でしたし、

 言いたい事もたくさんあるでしょ?」


「へ? えぇえええっ!?

 そ、それはそうかも知れないけどっ!


 いえ、でも、そ、そうなのかしら?」


その後、数日して迎えの馬車が

『ゴミ捨て場』の町に到着。


俺と武田さんが代表として、王城へ

向かう事となった。



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