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第31話・謝罪03


「……彼女は?」


罪人のように、後ろ手で縛られた少女を

前に、彼女の素性を問う。


「王家の末端に連なる者です。


 この者が島村をかどわかし―――

 さらに召喚者のスキルによって

 これを利用、

 そして非戦闘系の召喚者を、理不尽に

 扱っていた事がわかりました」


「この者の名前はステラ……

 アンク王女様と同じ王族の子女では

 ありますが……


 身分としては、下から数えた方が

 早い者です……


 第8夫人の次女にあたります……」


アンク王女様とグリークが説明する。


「自分たちは関係無いとでも言う

 つもりなの?」


武田さんがキッとなって、王女様と

魔導師ふうの男をにらみつけるが、


「いいえ、そんな。

 王族として、責任の一端は感じて

 おります」


「だからこそ、こうして……

 責任の所在を明らかにするために……

 王族といえども彼女を引き立てて来た

 わけです……


 それと、雨霧あまぎり様に乱暴した

 兵士たち……

 武田様を始め、非戦闘スキルの

 召喚者たちを好き勝手に扱かった

 バダール……


 それらの者は、すでに処刑済みです……」


そこで俺はそう申し訳なさそうに話す

2人に向き合い、


「島村は?」


満身創痍まんしんそういでしたので治療中です。

 治るのを待って改めて事情聴取し、

 その後は召喚者たちに決めて頂こうかと。


 ただ、完治は難しいと見ております」


「僕や非戦闘系スキルの召喚者たちに対する

 扱いを、公表するというお話は?」


「……すでに準備は出来ております。

 ご希望であれば、明日にでも……」


俺と武田さんが周囲を見渡すと、すでに

王城にいた召喚者たちは―――

一件落着という空気が広がっていた。


まあ当人たちは酷い扱いを受けて

来なかっただろうし、犯人も責任者も

罰した……

それならもうこれ以上は事を荒立てる

必要はない、そんな雰囲気だ。


そこで俺は改めてアンク王女様・グリークと

対峙し、


「ステラ、というこの者は、王族の中では

 身分が相当低いというお話でしたが。


 どうしてそのような者に、召喚者たちの

 扱いを任せたのでしょうか?」


「い、いえ。任せてなどおりません!


 それはこの者が勝手にやった事で」


「身分が低いからこそ……

 立場を上げようと、召喚者たちと接触

 したのでしょう……


 お望みであれば、この場で首をはねる事も

 出来ますが……」


その言葉に、ステラという少女はビクッと

肩を震わせる。


「そ、そこまでは」


とっさに武田さんがそれを否定する。


グリークやそれまでの経緯を知っている

彼女としては―――

このステラという少女は、単なる

スケープゴートという事はわかって

いるのだろう。

これが茶番だという事も。


ただ、現状それをひっくり返すだけの

証拠はこちらには無い。


武田さんは俺の方を見て、ここらで

痛み分け、認めるしかないという

表情になるが、


「……では、そのステラという方を

 こちらに頂けますか?」


「えっ?」


「……んっ?」


アンク王女様とグリークから、意外と

言わんばかりの声が上がる。


「だって犯人―――

 責任者はその方なんでしょう?


 それなら、僕に報復の権利はあると

 思いますけど?」


その提案に2人は顔を見合わせ、


「い、いえ……

 一応王族でもありますゆえ、苦しまずに

 死なせてやりたいのですが」


「別に拷問したりとかはしませんけど」


「……では、それでご納得頂けるので

 あれば……」


「グリーク!?」


彼が了承した事で、王女様は驚きの声を

上げるが、


「(……どうせ口止めは出来ているの

 でしょう……?


 もし自分が真実を話せば、彼女の母や姉が

 無事では済まないと……)」


「(そ、それはそうだが)」


「(であるならば、渡した方がよろしい

 かと……


 それで彼の溜飲が下がるのであれば

 結構……

 こちらも犯人を引き渡すという、

 誠意を見せた事になりますから……)」


2人は小声で数回やりとりした後、


「では、そのように。


 そして被害を受けた召喚者たちに

 つきましては、後日その賠償の

 話し合いを」


「よろしくお願いします」


と、俺が頭を下げると、


「と、とんでもございません!

 わらわたちの目が行き届かなかった事が

 原因でございますから」


「……では、今後とも……

 友好的な関係でいられる事を……」


そこでどこからともなく拍手が起こり、

『和解』したという事で幕を閉じた。




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