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第32話・召喚者たち


「まさか、非戦闘系の召喚者がそんな扱いを

 受けているとは思わなかった」


「どうか謝罪させてください。


 今まで気付かずに申し訳ありません」


その後、俺は武田さんと―――

今回の件の犯人という事になっている、

ステラさんと一緒に、


王城で暮らしていた召喚者の代表と会う事に

なった。


代表として来たのは、熊谷琉絆空くまがや・るきあという

中肉中背の、大学生くらいの青年と、


白波瀬葵しらはせ・あおいという……

ワンレンロングで片目を隠した、

キャリアウーマンといった女性で、


「だけど、今回の元凶というか―――

 首謀者と一緒に会うとはどういう」


水色の髪をした少女を一瞥いちべつして、

熊谷さんが問う。


そこで俺はハァ、とため息をついて、


「まさかあの茶番を、

 信じているんですか?」


「……!」


その言葉に、彼の顔色が変わる。


「その子の言う通りよ、熊谷さん。


 恐らくその少女はスケープゴート。

 いざという時、責任を全て背負えと

 強制されたんでしょうね」


そしてもう一方の代表の女性は―――

顔色を変えずに肯定する。


「い、いやだって仮にも王族だぞ?

 それとも替え玉だっていうのか?」


なおも青年は食い下がる。


半分くらいはそうだとわかっていても、

まだ心のどこかでアスタイル王国や、

その王族を信じたいと思っているのだろう。


「王族である事は間違い無いと思います。


 ですが……

 あの王女の話を聞いていたでしょう?


 同じ王族ではあるが、身分としては

 下から数えた方が早いって。


 そんな人間に―――

 異世界からの召喚者という、最重要機密を

 任せると思いますか?」


「そうなのか?」


熊谷さんはそのまま、少女に向けて

聞き返すが、


「ち、違います!

 全ては私の責任で……!」


「と言うように命令されているんですよね?

 家族か大事な人でも人質にされましたか?


 もし本当の事を話したら、それらの人を

 殺すとか」


「あ……」


俺の言葉を聞いた彼女は、ガックリと

うなだれる。


「だ、だが―――

 身分が低いとはいえ、王族を切り捨てて

 まで何を守ろうとしているんだ?


 『ゴミ捨て場』の街や、非戦闘系スキルの

 召喚者の扱いは、すでにバレてしまったん

 だろう?


 もはや何の意味も無いと思うが」


「これまでの体制保持……

 それと保身、でしょうね。


 戦闘系スキルを持つ召喚者たちは、

 最高戦力である事に変わりはないわ。


 非戦闘系スキルの召喚者への待遇改善で

 済むのであれば、それでいいと踏んだん

 でしょうね」


なおも言い返す熊谷さんに、白波瀬さんは

とどめを刺すように告げる。


「そういう口ぶりですと、まるで王国の

 して来た事を、わかっていたようですね」


「多分、こちらにいる召喚者も―――

 薄々気付いていたとは思うわ。


 ただうかつに動いて、一気に皆殺しにして

 証拠隠滅を図るとも限らないから……

 決定的な証拠をつかむまで、動くに

 動けなかったのよ。


 さらに島村?

 アレが王国と組んで、ヤバい情報は

 文字通り消していたんでしょうね」


武田さんの疑問に、代表の女性は淡々と

返す。


「それに、見て見ぬフリをしていれば、

 自分たちは贅沢な暮らしが保障されて

 いるし―――


 同じ召喚者と言っても赤の他人。

 身内が関わっていなければ、

 信じていた方が楽だもの」


それは現実でもあった。


同じ世界から来たとはいえ、まったくの

見ず知らずの人間のために……

今の生活を捨ててまでリスクを背負う

理由は無い。


「それで、雨霧あまぎり君……

 賠償や要求はこれからよね?


 非戦闘系スキルの召喚者に対する

 仕打ちを、国内外に公表せよ―――

 これは通ると思うけど。


 他に何を望んでいるの?」


「ええ、ちょっとですね。


 二度とこういった事を起こさせない

 ためにも、考えている事があります。


 再発防止プログラム、とでも

 言いましょうか」


「再発防止プログラム……?」


俺の言葉に熊谷さんが疑問の声を上げ、


「ま、それはおいおい話します。


 その前に、こちらの要求を通さなければ」


そこで俺は、次の段階へと話を進めた。



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