目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報

第33話・要求


雨霧あまぎり様、武田様。

 そして熊谷様、白波瀬様。


 今回の件については、改めてお詫び

 申し上げます。

 要求も……

 出来得る限りの事は飲みますので」


長い銀髪をした20代と思われる王女様が、

こちらに頭を下げる。


後日、こちらの要求を公式に伝える

事となり、


王城の一角の部屋で、それぞれの代表者が

集まった。


『ゴミ捨て場』代表として、俺と武田さん。


王城の召喚者代表として、熊谷さんと

白波瀬しらはせさん。


アスタイル王国からは―――

アンク王女様にグリーク宰相。


そして、事務方の役人と思われる数名が

控えていた。


そこでまず俺から口を開き、


「では、以前から伝えていた……

 非戦闘系スキルの召喚者に対する虐待。


 それを国内外へ公表する事。


 そして国家賠償として―――

 被害を受けた召喚者に、それぞれ

 国家予算の1/100を支払う。


 島村が殺した分も含め、死亡した

 召喚者については1人につき1/10。


 これも内外へ発表してください」


恐らくすさまじい金額になるだろうが……

犠牲者も出ている以上、こちらとしても

甘い賠償で済ませる気はない。


自分たちがして来た事は、決して安い

事ではないと、思い知らせる必要が

あるのだ。


「……ど、どうなりますか?

 計算では……」


魔導師ふうの格好をしたグリーク宰相さいしょうが、

役人に対して質問し、


「ざ、ざっとですが―――

 今年度の国家予算を大幅に超えるかと。


 分割にして頂ければ何とか」


まあそうなるか。

あの『ゴミ捨て場』だけでも、召喚者は

50人ほどいたし……


それで50%カットされて、さらに

犠牲者が5人もいれば、それで100%

吹き飛ぶものな。


「……犠牲者については、おそらく遺族に

 支払われるのでしょうが……


 その遺族がいない場合は……?」


宰相がこちらの顔色をうかがうように

聞いてきて、


「ああ、そういった事も考えられますね。


 そういった場合は、『ゴミ捨て場』で

 虐待を受けた人たちに均等に配って

 ください」


役人の1人がそれを聞いて、ガリガリと

書類に書き込んでいく。


「で、ですがその―――

 あまりにも膨大です。

 これでは、国民の生活にも支障が

 出ます。


 減額、もしくは分割にして頂く事は

 出来ないでしょうか……?」


アンク王女様も、まさか国家予算を超える

額を要求されるとは思わなかったのか、

引き下げ交渉に入る。


「厳しいでしょうか?」


「いや、いきなり国家予算を超える

 要求なんて、普通に無茶だ。


 それで国が無茶苦茶になったら、

 召喚者たちの生活だって破綻はたんして

 しまう」


「やはり分割払いが―――

 落としどころでしょうね」


俺の言葉に、すかさず熊谷さん、

白波瀬さんが指摘し、


「ですが、死者まで出ている以上、

 中途半端な対応で済ませるわけには

 いきません。


 これは、アタシたちの間で決定した

 はずですけど」


そこで武田さんも意見を入れてくる。


「だがそれでアスタイル王国の経済が

 破綻してしまったら、元も子も無いぞ」


「分割だと、どれくらいかかりますか?」


王城の召喚者代表2人は、今度は役人に

質問を向けて、


「今の税制を維持しつつ、年間これだけの

 増税を見込めば……


 15年から20年ほどかかると

 思われます」


手元の紙に計算式であろうものを書き込み、

その上で答えてくる。


「それ以下だと厳しいですか?」


「ど、どうでしょうか。

 自然災害や突発的な事態が起きない

 前提でお話ししておりますので」


苦心しながらこちらに伝えてくるのが

わかる。


「せ、せめて代案なり―――

 別の可能な条件にしてくださる事は

 出来ないのでしょうか?」


アンク王女様の言葉に、召喚者組は

それぞれ顔を見合わせて、


「そうですね……

 では、こういうのはどうでしょうか」


俺はとある提案をする事にした。




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?