「ミツ子ぉー!!」
「兄貴!!」
「あなた……!!」
王城で、これまでの非戦闘系スキルの
召喚者たちへの虐待、非道な扱いを
認めさせ―――
いったんの和解を見た後、俺たちは
『ゴミ捨て場』の街へと帰還した。
これまで、ここに隔離されていた召喚者の
身内たちも、これを機に自由に会う事が
保障され、
あちこちで『解放』された事を、抱き合って
喜びを表現していた。
「で、どうするんだ?
例の『再発防止プログラム』の件、
いつ話す?」
熊谷さんの問いに、俺は首を左右に振り、
「取り敢えずは落ち着いてからで
いいでしょう。
今は、再会を喜んでいる最中です。
明日にでも」
俺がそう言うと、
「そうね。
今はその方がいいわ」
「取り敢えず今日はあたしも休みたいし」
武田さん、白波瀬さんも俺の言葉に同調し、
明日の昼に、街の面々と話し合いの場を
持つ事になった。
「では、これより……
アスタイル王国と召喚者の間で結ばれた
和解案について、話し合いをしたいと
思います」
と、俺たち4人のメンバー、そしてここ
『ゴミ捨て場』の街と、ここに身内を
軟禁されていた王城の者が集まったのだが、
特にここに身内のいた王城メンバーは、
最初から殺気を隠そうともせず、
「妹から話は聞いた。
こんな事なら、俺は和解案に賛成なんて
しなかった!」
「何が『安全な場所』だ!
あのクソ王女―――」
「バダールとやらはどこにいる!?
この手で八つ裂きにしなければ
収まらん!!」
と、あちこちから怒りの声が上がる。
この街には、50人ほどの召喚者が
集められていた。
そして召喚者たちの年齢によほどの
開きはなく、
つまり女性の身内がいるという事は、
誰かの姉や妹、恋人、妻であるという
事でもあるのだ。
その女性は全てバダールの毒牙にかかって
いたとすれば……
その怒りは並大抵のものではないだろう。
王城では『もうこれでいいか』みたいな
雰囲気があったけど、実際に被害を目の
あたりにして、気が変わったんだろうな。
そして唯一、王家からのメンバーである
水色の髪をした少女が、青ざめて肩を
震わせ、
「オイ!!
そのステラって女が今回の首謀者だと
言っていたな!」
「覚悟は出来ているんだろうな!?」
と、怒りの矛先が彼女へと向かう。
「落ち着いて、みんな。
第一、王城で彼女を見た事あるの?
体のいい
それにそんなに怒っているのなら、
あの時、少しはあたしの話に耳を傾けて
くれても良かったんじゃなくて?」
白波瀬さんが言外に、『あの時、誰も
自分の言う事に理解を示さなかった』
と非難する。
彼女の言葉に、怒りを
メンバーは、そのトーンを落とす。
実際、彼らの怒りは―――
自分たちだけ王城でぬくぬくと優遇されて
いたという、後ろめたさを隠すためでも
あるのだろう。
「だがよ、死者まで出していたと
聞いている」
「いくら賠償されても、それで和解と
いうのは……」
それでもなお、和解に反発する声が
出て来るが、
「島村が、同じ召喚者として協力して
いたんだ。
その行動を見抜けなかった俺たちにも、
責任の
「ぐ……っ」
熊谷さんの言う、裏切者がいたという事実に
彼らは苦々しく声を詰まらせる。
ようやく場が冷静になってきた。
そこで俺は、武田さんに目配せして、
「でも、アタシも和解には反対です。
正直、アスタイル王国を滅ぼさないと
気が済みません。
それくらい、許せる事では無いと
思っています」
『えっ?』『いや、そこまでは』
『皆殺し?』と―――
口々に戸惑いの声が上がるが、
「アタシがここに連れて来られて、
どれだけ心身ともに酷い扱いを受けたか
わかりますか?
毎日、あのバダールという男に
体を汚されながら……
『アタシのような無能が生きられるのは、
ボスのおかげです』
顔を合わせる度に、そう言う事を強制
されたんですよ?
こんな国、滅ぶのが当然だと思い
ませんか?」
彼女の独白とも言える言葉に、
会議の場は重苦しい沈黙に支配される。
そこで俺が片手を挙げて、
「ですが、まあ―――
滅ぼすにしても今のところ、方法が
思いつきません。
出来れば自殺して欲しいのですが、
それも実現可能性が薄い……
そこで今後の方針として、
『再発防止プログラム』を
提案いたします」
そして俺に、会議中の全員の視線が
集まった―――