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第61話・戦闘系スキルVS非戦闘系スキル03


「いやー『落とし穴作戦』、

 見事に決まりましたね!」


「他人事だと思って……

 本当にアタシ、怖かったんですからね!?

 あのビッカブって人に突っ込んで来られた

 時は!!」


試合終了後、武田さんを労うと―――

彼女からは抗議の声が返って来た。


「ま、まあ……

 勝ちは勝ちって事で」


「場所を指定したのは、こういう意図が

 あったからなのね」


熊谷くまがやさん、白波瀬しらはせさんが、

呆れるように語る。


『場所などは非戦闘系スキルである2人が

 指定出来る事』

という条件を入れたのはこのためで、


また、『型』を教えたところで3日程度では

どうにもならず―――

それでも教えたのは、彼に下手に地面に

警戒して欲しくなく……

彼女に視線を集中させる狙いがあった。


「ふざけんな!!


 こんな条件付きの勝負なんて

 認められるか!!


 第一、武器無しじゃなかったのかよ!!」


負けた方のビッカブは怒りが収まらず、

無効を主張するが、


「地面を武器と見るかどうかですねえ。


 それに武器ありだったら、多分―――

 あの落とし穴の底に槍やら剣やら設置

 していましたよ?


 もともとあれ、そういう罠だったんで。

 その方が良かったんですか?」


俺がそう言うと彼は肩をビクッと震わせ、

黙り込むが、


「まあ、次のスフィアさんとの対戦では、

 落とし穴は使いませんよ。


 それじゃ、彼女のスキルによって勝った、

 という事にはなりませんのでね」


落とし穴に誘い込み、武田さんは

浮遊フロート』スキルで自分に対しては

落とし穴を無効化させた。


使い方次第で非戦闘系スキルは『化ける』。


それを周知させるための勝負でも

あったのだ。


「何だよアレは!」


「あんなので勝ったと言えるのか!?」


と、周囲からも疑問の声が上がるが、

俺はその1人に近付いて、


「『浮遊』出来るという事はつまり……

 ありとあらゆる地形効果を受けない、

 という事ですよ?


 少なくとも地上の罠を全て回避出来て、

 それで味方を危険にさらす事なく、

 先々の情報を持ち帰ってくれる。


 がけだって湖の上だって飛び越えて、

 今後どちらに動けばいいかを示してくれる

 存在です。


 それが1人パーティーにいるだけで、

 どれだけ安全に移動出来るか―――


 少し頭を使って考えれば、その重要性が

 わかるんじゃないでしょうか?」


見渡すと、ケガをしていたり、

中には腕や足が無い人も結構いて、


恐らく彼らはそれで、冒険者を

止めざるを得なかった人たちだと

推測出来る。


多分、戦闘系スキルに頼り切りで……

斥候せっこう』とか『偵察』という概念が

軽視され過ぎているのだろう。


そこで俺は改めてビッカブに向き直り、


「じゃあ、次はスフィアさんとの対戦に

 なりますが―――


 落とし穴以外に変えて欲しい条件とかは

 ありますか?」


それを聞いたギルドマスターは顔を

しかめて、


「ケッ! ねえよ!!


 だが次に勝つのは俺だ!!

 覚えておけよ!!」


そう捨て台詞を残して彼は去り、

後日、スフィアさんの戦いに備える事に

なった。




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