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第63話・戦闘系スキルVS非戦闘系スキル05


「あのー、すいません」


翌日―――

俺は一人で、あの冒険者ギルドへと

やって来ていた。


「あぁ? 何でこんなところにガキが」


「ゲッ!?

 ありゃあ、『無能ノースキル』の……!」


「『超身体強化ハイパーブースト』のギルドマスターにも

 勝ったとかいう―――」


すでに顔は広く知られたのか、前回のように

無駄に絡まれるような事はなく、


そのまま受付の女性にまで向かうと、


「あのう、いいでしょうか?」


身長はまだ12・3才くらいの俺が

カウンター越しに話すと、


「あ、はい。何でしょう」


ぎこちない笑顔を俺に向けて来る。

多分警戒しているんだろうけど、

俺は別に、無差別に敵対したつもりは

無いのだが。


「ギルドマスターのビッカブさんは

 いらっしゃいますでしょうか?


 スフィアさんとの対戦について、

 決まった事を報告しに来たんですけど」


自分がただ伝言を伝えに来ただけだと

知ると、彼女はホッとした様子で、


「わかりました。

 少々お待ちください」


こちらに背を向けて、事務的に

対応し始めた。




「―――ああ。

 場所・日時は確かに聞いた。


 間違いなくその日に向かおう」


ギルマスの部屋で、赤い短髪の筋肉質の男が

うなずきながら語る。


「しかし何だってお前、あんな弱い

 スキル持ちと一緒に行動しているんだ?


 お前さんなら、宮仕えでも何でも、

 思いのままだろうに」


ビッカブは俺が非戦闘系スキルと一緒に

いるのが納得出来ない、というように

不機嫌そうな表情になる。


「まあ、僕のいた世界にはもともと

 スキルも魔法もありませんし。


 それにある物は何でもなるべく使おう、

 という概念がありましたから」


「ふぅん?」


興味を持ったのか、彼は俺の話に耳を

傾ける。


「例えばギルマスの『超身体強化』ですが、

 あれ、もし城の上とか、もっと高い

 ところから落ちても大丈夫なもの

 なんでしょうか?」


すると彼はアゴに手をあてて、


「さすがにそりゃ無理だ。


 まあもしそんな事を強行しなけりゃ

 ならない時は、治癒師ヒーラーがいるからな」


「ではその治癒師がいない場合は?


 治癒師がいても、魔力が尽きていたり

 魔法が封じられていた場合は?」


「む……」


彼は両腕を組んで考え込む。


「僕の世界の古い国に、一芸に秀でていれば

 誰でも召し抱えた人がいたそうです。


 どんなくだらない事でもいい。


 例えば、動物の鳴き声の物まねが出来る。

 例えば、他人が書いた物をそっくりに書く

 事が出来る。


 そういう人たちも喜んで雇ったそうです」


異世界の話に興味が出て来たのか、

ビッカブは身を乗り出して聞き始めた。





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