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第64話・戦闘系スキルVS非戦闘系スキル06


「動物の鳴き声に、他人の書いたものの

 模倣もほうか。


 しかし、そんなやつらが役に立つとは

 思えねぇんだが」


ギルドマスターは考え込みながら、

俺に聞き返して来て、


「戦闘においてはそうでしょうね。


 それで、その人はとある国の偉い人

 だったんですけどね。


 ある時、他国に呼ばれた際、その国に

 監禁されそうになったので……

 逃げる事にしたんですよ」


ふむふむ、と、いつの間にか同室にいた

秘書のような女性職員も聞き入っていて、


「でも逃げると言っても、たいていの

 関所は閉じられています。


 そして関所を通るには通行証が必要

 ですが、もちろんそんなもの持って

 いません。


 他の人に譲ってもらおうにも、それは

 本人確認のためのものですから―――」


「まあ役には立たねぇか」


ガシガシと頭をかく彼を前に俺は続けて、


「でも他の人に見せてもらう事は可能です。


 そこで彼は、偽造の名人にそれを元にして

 自分の通行証を作ってもらったんです」


「なるほど」


そこでビッカブは合点がいったように

うなずく。


「でもまた別の問題がありました。


 というのは、逃げ出したのは夜だったん

 ですが、


 実は夜明けを告げる鳥というのが

 いまして、その鳥が鳴くまで門は

 開けてはならない、という規則が

 その国にはあったんです」


「そこで、動物の鳴き声を真似る事が出来る

 ヤツの出番ってワケか」


今度は秘書風の女性と一緒に、

彼はうなずいて、


「はい。

 それで一行は、その国を何とか脱出する

 事が出来たそうです。


 実際にあった事かどうかまでは、

 わかりませんけれど―――

 どんな能力でも使い道はある、という

 教訓として残っています」


実際は、いろいろな中国の古典をツギハギ

したものだが……

2人は感心したように俺の話に聞き入って

いて、


「なかなか興味深い話だった。


 ただそれは、魔法やスキルが一切無い

 世界の話だろう?


 そのお偉いさんが強力な戦闘系スキル

 持ちなら―――

 そもそも監禁される事も無かったんじゃ

 ねえのか?」


と、話は振り出しに戻り、俺はため息を

ついて、


「では、次のスフィアさんとの対戦で、

 この世界でも通用するという事を

 証明してみせましょう。


 あ、それと話に付き合って頂いた

 お礼として1つ。


 スフィアさんと共に戦うパートナーは、

 『イタズラ好きネズミノーティー・ラット』と、

 『弾丸オウムバレットパレット』です。


 それでは、健闘をお祈りいたします」


そこで俺は頭を下げ、ギルマスの部屋を

後にした。





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