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第67話・戦闘系スキルVS非戦闘系スキル09


「(何だ!?

 何をしやがった!?)」


小さな『イタズラ好きネズミノーティー・ラット』が

飛び上がり、すぐに草むらの中へと

姿を消す。


そのジャンプする際の『ボッ』という音は、

彼の背後からして、


振り返った時にはすでに、草むらの中に

紛れたネズミの姿は見えなくなっていた。


「あれは―――」


「『弾丸オウムバレットパレット』が、

 いつの間にかビッカブの上に」


熊谷くまがやさんと白波瀬しらはせさんが、

目ざとく状況に気付く。


「鳥どもがギルドマスターの上に

 来ているぞ」


「これから仕掛けるのか?」


ギャラリーもそれに気付いたのか、

地上と上空を交互に視線が行き来して、


「あの鳥……

 弾丸バレット、って名前がついているけど、

 もしかして攻撃力が高いとか?」


武田さんの問いに俺は首を左右に振り、


「飛ぶ速度は速いらしいですけど、

 別に攻撃に優れているとかは

 無いそうです。


 体当たりなんてもってのほかだと

 聞いています」


そんな俺と武田さんのやり取りを

聞いたのか、ビッカブは眉間みけんにシワを

寄せる。


「(どういう事だ?

 あの鳥で攻撃するんじゃないのか?


 それにネズミの動きも気になる。


 真上にジャンプして、まるで俺に

 見つけて欲しいと言わんばかりの

 動き―――

 それも俺の背後でだ。


 スフィアから注意をそらすため?

 いや、それはただの時間稼ぎにしか

 ならねぇ)」


彼は思考をめぐらすが、答えは出て来ない。

そうしている間に、また『ボッ』と地上から

ネズミのジャンプする音が聞こえ、


「くっ!」


「今度はこっちか!?」


「くそっ、うっとうしい!」


どうやら鳥と同じく、ネズミも

複数いるようで……

音は必ず彼の視界の外から聞こえて来て、

その度に彼はその方向へと確認のために

視線を向ける。


「おい、アレを見ろ!」


「横一直線に並んで飛び始めたぞ!」


「あんな飛び方も出来るのか」


すると今度は上空の鳥たちが、

編隊を組むようにして飛行し、

それがギャラリーの注目と声を誘う。


だがビッカブは首を左右に振り、


「(惑わされるな―――


 このまま、ゆっくりと、確実に

 スフィアとの距離を詰めるんだ。


 あの鳥もネズミもたいした攻撃は

 出来ないはずだ。

 ただ何を仕掛けてくるのかわから

 ねぇから、目は離せないが。


 とにかく注意を怠る事なく、

 目標……あいつに近付くんだ!


 手の届く距離にさえ行け、

 ば……っ!?)」


その時、対戦相手の方を向いていた

彼の視線は―――

なぜか下半身、そして地面へと吸い込まれ、


その両手は倒れまいと、反射的に地面へ

手の平を向けて、


「しょ、勝負あり!!


 この試合……

 スフィアの勝利です!!」


司会者役の男の声で、決着が告げられた。





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