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第68話・戦闘系スキルVS非戦闘系スキル10


「この試合……

 スフィアの勝利です!!」


司会役の男の声で、スフィアさんの

勝利が告げられる。


そして告げられたビッカブはというと―――


「ふざけんじゃねぇよ!

 何だ!? いったい何が起きた!!


 ……って、何だこりゃ」


立ち上がった彼は、また地面にしゃがみ

こんで、


自分が転倒した原因に目を奪われていた。


「それがあなたが転んだ原因ですよ。


 『イタズラ好きネズミノーティー・ラット』が、

 あなたの周囲で草を結んでいたんです」


ネズミは何も1匹だけではない。


弾丸オウムバレットパレット』が4匹

いたように―――

彼らもまた、複数で行動していたのである。


「あ、あの4本の旗の意味は?


 そしてネズミどもは、どうしてジャンプ

 していたんだ?」


ギルドマスターが近寄った俺に矢継ぎ早に

質問を浴びせて来て、


「視線誘導……

 そこへ目を向けさせ、注意を引く

 ためです。


 前回、あなたは落とし穴で負けて

 います。

 だからどうしても地面を警戒するのは

 目に見えていました。


 それで、彼らにそれを無くすため、

 動いてもらっていたんです」


まず上空から出現した鳥。


そしてスフィアさんの四方に落とされた

4本の旗。


これで視線は、どうしても遠くにいる

彼女と旗に引っ張られる。


さらに自分の周囲では、ネズミたちが

あちこでジャンプを繰り返し―――


その上、自分の頭上で旋回し始める鳥たち。


それで完全に足元から注意を

反らしたのである。


彼は悔しそうに結ばれた草を手に

取って、


「こ、こんなくだらない罠に俺様が」


「ええ、とてもくだらないでしょう?


 ですがギルドマスターであれば、

 戦闘の最中に姿勢を崩す事が、

 どれだけ危険なのかご存知のはず」


『実戦では役に立たない』……

という事を言わせないために釘を差す。


「スキル以外の手段も、捨てたものでは

 ないでしょう?」


「特にあたしたちの世界には魔法や

 スキルなんて無いから―――

 どんな手段でも使うわよ?


 むしろ、こんな便利な能力があって、

 どうして使い方を考えないのか、

 わからないくらいだわ」


熊谷くまがやさんと白波瀬しらはせさんの、

攻撃特化スキル持ちに言われ、ビッカブは

黙り込む。


そして武田さんも近付いて来て、


「さて……


 非戦闘系スキル持ちの待遇改善の件。


 約束は守って頂けますね?」


「ぐ、ぐぐ―――


 わ、わかった。

 今後は各ギルド支部に通達を出す。


 例え非戦闘系スキル持ちといえど、

 報酬や扱いに差は付けないとな」


そして俺がスフィアさんの方へ

振り返ると、


「や、やりました……!


 みんな、頑張りましたね!

 これからいっぱい美味しいものを

 食べさせてあげる事が出来ます!」


自分のテイムした鳥、ネズミにまとわり

つかれながら―――

彼女は感謝を伝えていた。




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