「では、アスタイル王国の要望……
確かに受け入れた。
我が国も、これまでのスタンピードが
かつて召喚し、追放した非戦闘系スキルの
者が原因だと知れ渡れば―――
考え方を変える者が出てくるであろう。
帰国したら、よろしく伝えておいてくれ」
シーライド王国の王城、その
50代後半と思われる王が、
声をかける。
アスタイル王国からの使節団として来た
俺たちだったが、
来た当時は武田さんと一緒に、兵士たちの
『お相手』をさせられそうになったり、
散々な目にあったけど……
一通り、この国に来た目的は達成出来たから
よしとしよう。
「一応―――
グレメン国・シュロランド教国にも
親書を送るつもりではあるが、
ほぼ国交が無いので、過度な期待は
しないで欲しい」
「いえ、助かります」
「感謝申し上げます」
返礼し、
「それではこれにて、失礼いたします」
最後に武田さんが挨拶し、俺たちは
謁見の場を後にした。
「これからどうするの?」
「やっぱりいったん、アスタイル王国に
戻ってから考えた方がいいと思います」
王城の与えられた一室に戻った後、
武田さんが聞いて来て、俺は答える。
残りの主要国は、グレメン国と
シュロランド教国だが……
立地的にアスタイル王国からどこも
離れており、
ある意味アスタイル王国を中心に、
どこも遠く、そして近いと言えた。
シュロランド教国
■
■アスタイル王国
シーライド王国
■ ■
グレメン国
位置的にはだいたい上記のように
なっていて、グレメン国にしろ
シュロランド教国にしろ―――
どこから行っても時間的なロスは
無いように思える。
なので、いったんアスタイル王国に
今回の件を報告がてら、戻った方が
いいと判断した。
「そうだな。そうするか」
「みんなの様子も気になるしね」
熊谷さんと白波瀬さんも同意する。
何だかんだ言って、最初に召喚された
国でもあり……
それなりの愛着というか『帰る場所』
としての認識はあるらしい。
「あの『ゴミ捨て場』も、バダールさえ
いなければ、普通に暮らせていたし」
武田さんも、伸びをしながら第二の故郷への
望郷を語る。
するとそこへノックの音が響き、
「?? どなたでしょうか」
俺がそちらへ向かって問うと、
「あの―――
スフィアです。
部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
その声に、室内の俺たちは顔を見合わせた。