「……シーライド王国からの書簡、
確かに拝見いたしました。
任務、ご苦労様です。
下がってお休みください」
アンク王女様が静かにそう告げる。
王城に通された俺たちは―――
すぐに
そこにいた王女様、そしてグリーク宰相へ
シーライド王国で起きた事を含めて報告し、
あちらの国王から、要求通りにする
書簡を頂いた事……
即ち、召喚者や非戦闘系スキルへの
差別待遇の改善などを約束させ、
また、次にグレメン国へ行くつもりなど、
方針を事細かに述べた。
そして王女様に下がって休むようにと
言われたので、みんなが立ち上がって
退室しようとした時、
「そういえば王女様」
「な、何でしょう」
俺はただ質問したい事があっただけ
なのだが―――
どうもかなり警戒というか恐怖を
持たれているらしい。
ちょっと怖がらせ過ぎたか、と
思いつつ、
「いえ、僕たちがいない間、何か
変わった事とかはありましたか?」
単なる状況確認なのだが、アンク王女様は
少し目線を伏せて、
「い、いえ……
たいした事は。
強いていえば、島村の容態がまだ
完治していない、という報告が
上がっているくらいでしょうか」
島村は俺たちと同じ召喚者で、
アスタイル王国から、不満や疑いを持つ
他の召喚者たちを黙らせたり処分したり
する役割を与えられていたヤツだが、
俺の手によって再起不能にされた。
だが、仮にも王国だし、ほどほどに
治療して、しゃべれないような状態に
されて例の『ゴミ捨て場』に送られると
踏んでいたのだが―――
「そんなに酷い状態だったのですか?」
そこでグリーク宰相が歩み出て来て、
「……すぐに
完治まではいかずとも何とかなったと
思われるのですが……
いかんせんあの現場には治癒師がおらず、
治療が遅れてしまったので……」
「そうですか」
それ以上は俺もつっこまず、
「何しているの、
「早く食事に行きましょう」
そう武田さんと
呼ばれ―――
俺は足早に謁見の間を退場した。
そして召喚者たちが去った後、
アンク王女とグリーク宰相は顔を近付け、
「……よろしいのですか?
島村が逃亡したという事を
告げなくても……」
「わらわたちは知らなかった―――
それでいいのです。
どこに逃げ延びたかはわかりませんが、
彼はあの少年に恨みを持っています。
出来れば共食いをして
もらいましょう……」
そこで2人、お互いに口元を歪めると、
すぐに表情を元に戻した。