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第76話・グレメン国へ03


「アスタイル王国の使者だと?

 ふむ……シーライド王国の手紙も

 持参していると―――


 しばらくここで待て。

 王宮に連絡する」


グレメン国の首都に到着した俺たちは、

両国から持参した手紙を門番に見せると、


さすがに国の使者相手にぞんざいな扱いは

出来ないのか、すぐに兵士が一人、駆けて

いった。


そして待たされる事小一時間ほど。


身分の高そうな服を来た、でっぷりと

肥え太ったオッサンがやって来て、


「アスタイル王国の使者と言ったか?


 では、熊谷くまがや殿と白波瀬しらはせ殿は

 こちらへ。


 他は担当の者が来るまで待機せよ」


明らかに非戦闘系スキルの俺たちに向けて、

オッサンはいやらしそうな笑みを浮かべる。


「それは出来ません」


「あたしたちは全員がアスタイル王国の

 使者です。


 別行動を取らせる意図は何ですか?」


全武器特化ウェポンマスター』と『全天候魔法オール・ウェザー』を持つ

2人の圧に、彼は一歩後ずさるも、


「し、しかしそこの3人は……

 『浮遊フロート』とテイマー。

 さらにその子供は『無能ノースキル』というでは

 ありませんか。


 とても国王陛下にお目通りさせるには

 まいりません」


やはり非戦闘系スキル持ちには価値が無いと

思われているのか、攻撃特化スキル持ちの

2人に言われても否定的に答える。


「じゃあ俺だけで行く。


 白波瀬さんは、彼らと一緒に待機

 していてくれ」


熊谷さんがそう言うと、


「え!? いえ―――

 それだけのスキル持ちの方を、

 こんな者どもと一緒にさせるわけには」


なおもグレメン国の使者は食い下がるが、


「この方々はあたしの同郷の人。

 そして彼女も大切な友人です。


 それを引き離そうとするのは、

 いったい何の目的があって?」


白波瀬さんがにらむと、使者のオッサンは

ビクッ、と肩を揺らす。


「あー、いいですよ白波瀬さん。

 お二人で行って来てください。


 こっちは何とかなるでしょうから」


俺がそう言うと、そのオッサンは

にやけた表情を隠そうともせず、


「……わかった。


 それと1つ言っておくが―――

 この中で一番強いのはその少年だからな。


 いいか、警告はしたぞ」


熊谷さんの言葉に、彼は目を白黒

させるが、


2人が去ると同時に俺たちに向かい、


「おい、クズども行くぞ。

 遅れるなよ」


態度が豹変ひょうへんしたそいつにため息をつき、

俺たちはついていく事になった。





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