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第78話・グレメン国の歓迎02


「ごぱぁあっ!?」


さすがに子供の軽い体重では、オッサンを

のけ反らせる事しか出来なかったが、


「おお!?

 あの『無能ノースキル』のガキ、

 やりやがったぞ!」


「どうした!

 『剛腕ストロング・アーム』スキル持ち!

 しっかりしろ!」


「面白れぇ!!

 やれやれー!!」


と、周囲のギャラリーたちもあおり始め、


「ここ、このクソガキがぁああっ!!」


鼻血を垂らしながら、オッサンは太った

その腹をぶるんぶるんと揺らし、


「武田さん、スフィアさん。

 ちょっと離れていてください。


 何なら『浮遊フロート』か、飛行する

 魔物につかまって避難を」


俺がそう伝えると2人は離れ始め、


「どうした?

 まさかこれで終わりじゃないだろ?」


挑発のように、クイクイと手を曲げる。

それを見たギャラリーたちはさらに

盛り上がり、


「ふざけおってぇええ!!


 『無能』ごときが、『剛腕』に逆らった

 事を後悔させてくれる!!」


と、いつの間にか1対1の戦いが始まり、

武田さんもスフィアさんも、中央から

離れても誰も気に留めず、


ある意味、望む状態に引き込む事が出来た。


「ぐおおぉおおっ!!」


彼はわかりやすい振りかぶるモーションで、

俺に襲い掛かってくるが、


「(道場で3日修行した子供の方が、

 まだマシだぞ……)」


確かに『力』そのものは強いのだろう。

しかしそれを生かし切れていない。


ただパンチを振り回す、それだけだ。

そしてちゃんとした訓練を受けた俺が、

それに当たる事はなく、

(当たったとしても無効化される

だろうけど)


「こっ、この―――

 ちょこまかと逃げるんじゃねぇえっ!!」


「いや、俺に当てたらあんたの拳が

 潰れるだけだからな?


 だから逃げてやっているんだが」


「わけのわからん事を言うなあぁあっ!!」


まあ説明したところでわかるはずもない。

そろそろ終わりにするか。


俺はまた一発パンチをかわした後、すぐに

オッサンの背後に回って、


「おっ!?」


「何だありゃ?」


「苦しまぎれか?」


ギャラリーから見れば、俺がオッサンの

背中に飛びついたようにしか見えない

だろうが、


そのまま首に手を回し……

いわゆるスリーパーホールドの体制に入る。


生き物であれば、呼吸を制限されて

タダで済むはずもなく、


「……ガ……ッ」


そこで彼を失神させると、


「おぉ、スゲェ!!」


「『無能』が『剛腕』に勝ったぞー!!」


「おい、誰か『無能』に賭けたヤツは

 いないのか!?」


と、ギャラリーたちが盛り上がる中、

俺は足を大きくドン!!

と床を踏み鳴らして、


「次は誰だ?」


俺が周囲をにらみつけると、一瞬の

沈黙の後―――


「上等だ!!」


「次は俺だ!!」


「いや、俺がいく!!


と、次々と名乗りを上げて来た。





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