「何なんだよ、あのガキぃ!!」
「知らないわよ!
でも戦闘系スキル持ちなのは確かだわ!
『
あっという間にやられたのよ!」
『
リーダーが、敵同士という事も忘れて
俺へ神経を集中させる。
そして俺はそのまま、『闘士』派閥の方へと
走り出し、
「!!
みんな、距離を取りなさい!!」
『魔術師』派閥のリーダーらしき女性が、
メンバーに指示を出し、
結果として、『闘士』の連中との
間隔が開く。
「くそっ!!
殺すつもりで構わん、やれ!!」
とっさの事態に、『闘士』リーダーは
いきなり殺害命令を出すが、
俺は彼の横を素早く走り、集団の
中へと飛び込む。
「ぐあっ!!」
そして1人が叫び声を上げた。
俺は何もしていない。
俺を攻撃しようとしたやつが、味方を
斬ってしまったのだ。
「バカ!
相手をよく見ろ!!」
「し、しかし……!
ガキの動きが早過ぎて」
ある意味これが、集団戦法の弱点だ。
俺は周囲全てが敵だから、攻撃範囲に
入ったヤツから相手にすればいい。
だが向こうは俺と味方を区別しなければ
ならず、しかも同士討ちが起きた事で
味方からの攻撃も警戒しなければ
ならなくなった。
そうなるとどうしても攻撃に確認時間が
生じる。
この時間差は戦闘において、致命的な
タイムラグとなり、
「うぐっ!!
バカ、俺だ!!」
「す、すまん!
くそ、あのガキィ!!」
俺がただ走り回るだけで、被害が拡大し、
「ちくしょう!!
おい、『魔術師』!!
何やってんだよ!」
「はぁ!?
あんたらを巻き込んでいいってんなら、
喜んでやるけど!?」
『魔術師』に取っては漁夫の利を狙う
願ってもない状況だが、
むしろ今の戦闘に加わる事で、
自分たちに俺の矛先が向かないか……
スキルと戦況を図りかねているのだろう。
どうやらそれなりに慎重な性格の
リーダーのようだ。
やがて無傷の『闘士』メンバーはいなく
なると、俺とリーダーの一対一となり、
「いったいどんなスキルを持ってやがる……
だが俺も『闘士』派閥のトップだ。
むざむざとやられるわけにはいかねえ。
来い!
『剣王』の力、見せてやるよ!」
そう言って彼は構えるが、向こうから
仕掛けて来る様子は無い。
俺が仕掛けるのを待ってカウンター狙い……
そんなところか。
そこで俺は、『闘士』メンバーの1人が
持っていたであろう、落ちていた剣を
拾うと、
「!
そうか、やはり貴様、何らかの
戦闘系スキル持ちか!
しかも武器持ちなら俺が負ける事はない!
さあ、かかってきやがれ!」
得物が同じなら自分に分があると
踏んだのか、急に強気になる。
そこで俺は一気に距離を詰めると、
「(さあ、どこから来る……?
上か? 下段か? それとも切り上げて
来るか!?
……!?)」
明らかに剣の距離ではない、密着するほどに
接近した俺は、
剣を握ったままの手で、彼の横面に
フックを叩きこんだ。