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第90話・3派閥の戦い06・決着


「!?」


「おい、あのガキどこ行った!?」


「い、いた!

 しゃがんで……


 いや、何だアレは!?

 まるで動物のように走ってくるぞ!!」


魔術師マジクール』は、一瞬少年の事を

見失った。


ただ彼は姿勢を低くしただけなのだが、

そこから先は予想を上回っていた。


まるで四足歩行の動物―――

猫かチーターかと思えるくらいに、

前傾ぜんけい姿勢で走り始めたのだ。




「っと。

 結構狙いは正確だな」


俺は地面に手が付きそうなくらいに

頭を下げながら、走っていた。


そして俺の周囲のあちこちで、攻撃魔法

らしき爆発や衝撃が起こる。


だがそのどれも俺には当たらない。

まあ、当たったとしても多分無効化される

だけだろうけど。


しかし連中は困惑しているだろうな。


そりゃそうだ、何せ遠距離攻撃というのは、

地面を撃つようには想定されていない。


ある程度の高台から見下ろして撃つ、

という攻撃は確かにあるだろうが、


多少の起伏はあるものの、平地、平面で

水平射撃ですらない、

『地上スレスレを走る目標物』に対する

射撃など、経験した事もないだろう。


日本でも戦国時代、銃で武装した騎馬隊が

いたが、


とある大きな戦いで、彼らは散々に

打ち破られた。


槍を中心とする歩兵部隊にだ。


あの時代、銃という飛び道具を撃ちながら

突っ込んでくる騎馬隊というのは、確かに

脅威だったと思うが、


歩兵部隊は全員地面にうつ伏せになって、

銃撃をかわし……

馬が突っ込んで来た時点で立ち上がり、

それで打撃を与えたとある。


まして遠距離攻撃魔法というのは、

狙撃タイプでも無い限り、攻撃範囲が広い。


という事はつまり、自分の近くに着弾など

させられないという事。


『下に向けて撃つ』という行動そのものが

タブーなのだ。


そう考えるうちに俺は、彼らの声が聞こえる

距離にまで接近していて―――


「ど、どうして撃つのを止めるの!!」


「しかし、こうまで近いと味方にも

 被害が……!」


「さ、散開!!

 全員バラバラに散りなさい!!


 誰か1人でも距離を取れば―――」


慌てて指示を出しているあの女性が、

『魔術師』のリーダーか。


そして俺は一気に彼女までの距離を詰め、


「……あ……」


至近距離にまで来た時点で、

『魔術師』リーダーは口を半開きにしたまま

動かなくなり、


「ねぇねぇ、もう終わり?

 それともまだ遊ぶの?


 ここで自爆覚悟でどっかーん!

 とかさー」


あえて無邪気むじゃきな笑顔で彼女にたずねると、


「わかったわ―――

 遊びは終わりよ。


 ワタシたちの負け。

 降参するわ」


そう言って彼女が杖を地面に置くと、

他のメンバーもそれに従うように

次々と持っている杖を手放した。




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