「面をあげよ」
グレメン国の国王の言葉に―――
『
派閥のリーダー3人は、同時に顔を上げる。
「王よ、この戦いは無効です!」
「こんなの、
ありませんわ!」
「三派閥の決着は、まだついて
おりませぬ!!」
と、口々に不満を述べるものの、
「余は『時と場所は余が選定する。
そしてその結果、敗者は勝者に従う』
そう言ったはずだが?」
俺はそれを聞いて思わずニヤリとするが、
すぐに表情を元に戻す。
そう、王様は『敗者は勝者に従う』と
言っただけで……
別に三派閥のどれか、と条件をつけて
いたわけではないのだ。
つまり乱入して彼らを制圧した俺こそが、
『勝者』であり―――
王の言葉通りにするのであれば、彼らは
俺に従わなければならないのである。
「し、しかし」
「不意をつかれましたが、この子は
『
「いくら不覚を取ったとはいえ、それは」
『闘士』『魔術師』『格闘家』の
リーダーたちは、それでもなお抗議の
姿勢を崩さないが、
「その『無能』に負けたのは誰か?
しかも上位の実力者を用意しろと
余は告げたはずだ。
そしてこの結果となったのだ。
まだ何か言う事でもあるのか?」
王の言葉に、『ぐっ』『それは……』と、
さすがに彼らも黙り込むが、
「まあまあ、陛下も落ち着いてください」
「彼らの言う事も一理あります。
それに最初はただ子供が紛れ込んだと
思っていただけでしょうし、うまく
対応出来なかったのも無理はないかと」
そこで助け舟を出したのは、
彼らのスキルは『
そして『
戦闘系スキルの中でも最上級クラスであり、
他国の人間とはいえ、無視出来ない
存在であり、そんな2人が
くれた事もあって、
「そそ、そうです!」
「今度こそ邪魔者が入らないよう、
万全の体制で―――」
「なにとぞ、ぜひもう一度機会を!!」
そう言って各派閥のリーダーは、地面に
額をこすりつけんばかりに頭を下げる。
「……ふぅむ。
どう思うかね、武田殿、スフィア殿」
王が問うた先は、『
テイマーという―――
いわばこの世界では外れスキルの2人で、
「なっ?」
「確かその者どもは戦闘系スキル持ちでは
無かったはず」
「なぜそのような者に」
彼らは国家の中でもそれなりに地位に
いたのだろう。
アスタイル王国からの使者の情報も
入っていたようであり、
そう口々に異を唱えるも、
「この2人は確かに戦闘系スキルは
持っておらぬが、
シーライド王国の冒険者ギルドマスターを
一騎打ちで破っておるほどの武人だ。
そこにいる少年のように、軽く見ていい
存在ではない」
戦闘系スキル持ちが、非戦闘系スキル持ちに
敗れる……
ましてや『無能』に敗れた事実を
王に指摘され、彼らは言葉を失う。
「アタシは別にいいと思いますよ?
どう考えても不可抗力でしょうし」
「そうですね。
今一度機会を与えてあげても」
そんな2人からも救いの手が差し伸べられ、
3人のリーダーの顔はパァッと明るくなる。
「ふむ。
それで少年―――
何と申したかな?」
「
「そうか。
それで雨霧よ。
貴殿はどうする?」
そこで私は考える素振りを見せて、
「僕も別に、邪魔しようとしてしたわけでは
ありませんからね……
その三派閥?
の方々で再び決着をつけようとするの
なら、どうぞご自由にとしか」
俺の言葉に、彼らは安堵の表情を見せるが、
「ただ、再び決着をつけるつもりで
あるのならば―――
再戦の理由も必要でしょう。
でなければ、正式に戦いの場を用意して
くださった……
陛下に落ち度、過ちがあった事にも
なりかねませんし」
何を言い出した?
と言わんばかりの顔をする3人の前で、
王は静かに口を開き、
「そうであるな。
では、正式に
『闘士』『魔術師』『格闘家』の上位
選抜人員は、
どこからともなく現れた『無能』の
少年により、手も無くひねられたため、
後日、三派閥のみで再戦する、と」
それを伝えれられた3人のリーダーは、
顔色を失い、
誰からともなく、再戦要求を取り下げたので
あった。