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第94話・情報整理と対策


「それで、どう思いますか?」


『ゴミ捨て場』の町に戻って来た俺たちは、

今後の方針について話し合っていた。


当面の目標は、もちろんシュロランド教国へ

行く事だが、


ここに来て新たに『島村逃亡』という

事案が入って来て―――

それについても対応を考えなければ

ならなくなったのである。


「アンク王女様の発言だけど」


「信じられます?」


熊谷くまがやさんに白波瀬しらはせさんが、

長テーブルに座る面々に問うが、

誰もが沈黙するか、黙って首を左右に振る。


「多分、逃げた事は以前から知っていたので

 しょう」


「こちらが意外にも無傷で戻って来たので、

 慌てて情報開示したのだと思われます」


俺と武田さんも、王女や宰相さいしょうの話を

うのみにせず、否定の意を示す。


「逃げているのは事実なんですよね?」


スフィアさんが根本的な事を指摘し、


「さすがにそれでウソをつくリスクは

 ないと思います。


 少なくとも国内にはいない……

 そう考えて差し支えないでしょう」


そう答えると、俺はアンク王女と同じ

王族の女性に視線を向け、


「ステラさんは何か聞いてませんか?」


「私も基本的には、この町で暮らして

 おりますから。


 ただここの料理は美味しいですので、

 母や姉に差し入れをする際、王城に

 行く事はありますけど。


 ですが、島村という人の話は、

 聞いた事がありません」


この人は王族とはいえ、末端クラス

なのだろう。

島村の事は下手をすると、王女が独断で

情報統制か、何か企んでいる可能性が

あるな。


「そのお姉さんやお母さん―――

 この町に迎える事は出来なあだっ!!」


そう熊谷さんが話し終える前に、

白波瀬さんがチョップを入れる。


「あなたねえ、まだ現実がわかってないの?

 どう考えてもこの人の母や姉は人質!


 こっちに寄越せなんて言おうものなら、

 あれこれ理由付けて引き延ばされた

 あげく、病死って事になるわよ!」


「まあ、あの王女の事ですから。

 それくらいは平気でやるでしょうね」


その説明に武田さんも同調する。

特に彼女はこの世界に来てから、

現実を嫌と言うほど思い知った

人だからな……


「でもその人は、そんなに厄介なの

 でしょうか?」


スフィアさんの質問に俺は両目を閉じて、


「『封印ロック・アウェイ』という―――

 相手の魔法やスキルを使えなくする

 スキルを持っています。


 当人に武術の心得は無かったように

 思えますが、人を傷つけたり殺したり

 する事に、躊躇ちゅうちょしない人間です。


 むしろ楽しんでいるように見えました」


俺の説明に、誰からともなく

ため息がれる。


「そ、そんな人に注意って……

 どうすればいいんですか?」


「僕が対峙たいじした時、その適用範囲は

 狭いように感じましたね。

 少なくとも屋敷内で使った場合、その

 外までには及ばないと思われます。


 恐らく強力なスキルである分、制限も

 あるのでしょう。


 今後はなるべく―――

 単独で動かず、誰かと一緒にいるように

 するべきですね。


 それともう1つは……」


そして島村の対策を講じ続け―――

その後改めて、シュロランド教国入りに

ついて話し合いを始めた。




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