あれから数日、俺たちは島村からの
襲撃を警戒していたが、
特にこれといった事はなく―――
シュロランド教国への
「来ませんでしたね」
武田さんがつぶやくように俺に話しかけ、
「やはり国外に行ったんでしょうかね。
まあ1人じゃ出来る事も限られて
いますし……
そもそも単体でのみのスキルだと
思われますから」
島村のスキル―――
『
敵味方関係なく発動するものだろう。
かつて俺のところへ来た時も単独だったし、
どちらかというと暗殺向けのスキルだ。
「そろそろ出発出来ますよー」
そこへスフィアさんが来て、テイムした
魔物や動物たちの準備が出来た事を告げる。
「ありがとうございます。
一応、周辺警戒は厳重にお願いします。
まあ団体でいるところへ、襲い掛かって
来る事は無いでしょうけど」
「そうですね。
それに、
対応すれば大丈夫そうですし」
彼女が言っているのは、俺が話した
もう1つの対応方法だ。
それはシンプルに『逃げる』事。
島村のスキル、『封印』は……
いわゆるアンチスキルとでもいうような
タイプ。
だがそれは単にスキルを使えなくするだけの
ものと見れば、
無理に戦闘に応じず、ただ全力でその場から
そして人の多い場所まで逃げ切れば、
それ以上追いかけてくる事もないだろう。
付け焼き刃で戦闘訓練をさせるよりも、
よっぽど安全を図れるはずだ。
当人自身に、攻撃力UPも何も無いの
だから―――
「ただ、スキル至上主義のこちらの世界で
いえば、彼のスキルは悪夢そのもの
ですからね」
「そちらの世界の住人だからこそ、
考えられる事ですよ。
『ただ力が互角になるだけ』って」
そう。冷静に考えればただそれだけの
話で、焦る必要も何も無いのだが……
スキル前提にどっぷり漬かっていると、
そういう発想自体無くなるのだろう。
「おーい」
「イチャついてないで、そろそろ
行きましょう」
町の外の方から、
「じゃあ、行きましょうか」
そして俺たちは『ゴミ捨て場』の町から、
シュロランド教国へと出発した。