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第97話・シュロランド教国02


『さあ、大変お待たせいたしました!!


 非戦闘系スキルや低スキルどもが、

 血で血を洗う儀式の場!!


 間もなく開催となります!!』


俺たちはその後、闘技場のような場所へと

引き出され、


見ると、広いサッカー場のようなところで、

観客席がぐるりと見渡せ、


さらに俺たちと同等と思われる人たちが、

青ざめた顔で武器を持たされていた。


「これって……」


「そういう事でしょうね。


 グレメン国でも、非戦闘系スキル同士で

 無理やり戦わされたりしていましたが、


 こっちでは殺し合いまでさせられて

 いるようです」


武田さんの問いに、俺が冷静に分析して

返すと、


「しゅ、宗教国でしょう!?

 そこで殺し合いを推奨すいしょうするんですか!?」


スフィアさんが叫ぶと―――

それを聞きつけたのか、司会役のような

男が近付いて来て、


『黙りなさーい!!

 神から見捨てられた非戦闘系スキル

 どもが!!


 お前たちの数が多過ぎて、処分する

 手間も一苦労なんですよ!?


 せめて神に選ばれたスキル持ちの

 手を汚さず、こうして数を減らし、

 さらに生き残る機会まで与えてあげて

 いるんでしょうが!!』


あー、これは……

他の国のスキル至上主義に、さらに

宗教という大義名分が加わった事で、

先鋭化せんえいかした感じか。


そこで俺は彼に近付き、


「生き残るってどういう事でしょうか?

 僕はまだこの国に来たばかりで、よく

 わからないんですけど」


俺をみたヤツは、新しいオモチャを

見つけたような目付きで、


『おーっとぉ!?

 確かキミは『無能ノースキル』でしたねぇ?


 前世でどれだけ悪い事をすれば、

 こんなスキルをさずかるんでしょうか!


 まあいいでしょう、教えてあげます!

 ここで1/10になるまで殺し合い、

 生き残れば晴れて放免ほうめん! ですっ!!


 そこまでやれば、さすがに神様も

 認めてくださるでしょー!!』


見たところ、俺たちも含めて人数は

50人くらい。


つまり残り5人になるまで生き残れば

いいって事か。

まあ、付き合うつもりも無いけど。


「えーっとぉ、それ貸してもらって

 いいですか?」


俺はマイクのような道具を指差すと、


『おおっとぉ!?

 どうやらこの『無能』の子供、何か

 言い残したい事があるみたいですおぉ!?


 遺言か!? それともお願いか!?

 命乞いは無駄ですよー!


 さあみなさん、この哀れな少年の言う事に

 耳を傾けてあげてくださーい!!』


彼はダンスでも踊るように、俺にそれを

渡して来て、


『あーあー、テステス。


 えっと、いきなり国に入るなりここに

 連れて来られた、雨霧あまぎりといいます。


 ちょっとみなさんに伝えたい事が

 ありましてぇ』


子供らしく俺が語ると、あちこちから、


『あれ何か可愛い顔ね』

『ちょっともったいないかも』

『もし生き残ったらペットにする?』


と、口々にギャラリーから評価が飛んで

来るが、俺は大きく息を吸い込むと、


『…………


 貴様ら全員皆殺しだっ!!!!!』


俺の絶叫に、ギャラリーたちや

他の出場者たちは、一瞬黙り込み

静かになった。





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