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第101話・裁き01


「ごふはっ!? なっ、なあっ!?」


イスごと後ろに倒れ込んだ教皇は、

鼻を押さえて上半身を起こそうとする。


そこへ俺が近寄って、すかさずまた

顔面へ蹴りをくらわすと、


「んがあぁっ!!」


教皇はさらに後方へと吹き飛ぶ。


「神に見放されて……が何だって?

 じゃあお前は『無能ノースキル』の僕に

 いいようにやられているんだから、


 このまま殺されても仕方がないって

 事だよなあ?」


「ひ、ひいっ」


情けない声を出しながら、教皇は

四つんばいになって逃げようとするも、


「あがぁっ!?」


俺が背中から踏みつけるように攻撃し、


「ほら、どうしました?

 神様とやらはどこへ行ったんです?


 このままだと『無能』の僕に

 殺されますよ?


 ほらほら、周囲も止めなくて

 いいんですかぁ?」


だが、護衛たちは一歩も動かない。


まあそりゃそうか。

教皇のスキルは連中も知っているはず。

そのコイツが、俺に手も足も出ずに一方的に

やられているんだから―――


そこへ、白波瀬しらはせさんと熊谷くまがやさんが

両側から俺の腕をつかんで、


雨霧あまぎり君、ステイステイ」


「気持ちは死ぬほどよくわかるが、

 そいつを殺したら交渉相手が

 いなくなったり面倒になるから」


2人の説得に俺は追撃を止め……

改めて『話し合い』の場を設ける事と

なった。




小一時間ほどして―――


顔を含め、体のあちこちに包帯を巻いた

教皇と、改めて対面する。


しかし、アスタイル王国側のメンバーである

こちらは、誰もひざまずかず直立し……

今後の交渉を物語っていた。


「今まで何人殺しましたか?


 ああ、これは召喚者の話です。

 こちらも確か召喚とやらを行って

 いるんですよね?


 僕も向こう側の人間なので―――

 それについて抗議する権利はあります」


フガフガと話す教皇に代わり、担当者らしき

中年が書面を持って来て、


「今まで、その……

 10人から20人くらいかと」


「やけに少ないですね?」


武田さんが眼鏡を光らせて疑問を

口にすると、


「しょ、召喚者は基本、高いスキルを

 持っている事が多いので―――


 そういうスキル持ちはたいてい、

 脱走してしまうのです、ハイ」


ああ、そういう事か。

そりゃいきなり殺し合えっていう国に

いるわけはない。

逃げられるんならそりゃ逃げるか。


そしてその10人から20人は、

一緒に逃げてくれる身内もいない……

運の悪い人たちだったと。


「そ、それでその―――


 そちらの要望である、非戦闘系スキルへの

 差別解消と、待遇改善……

 これはそのいろいろと、時間がかかるとは

 思われますが」


「あ、お待ちください。

 その前に―――」


俺は片手を挙げて話を中断させると、


「何?」


「どうかしたんですか、雨霧さん」


武田さんとスフィアさんが聞き返して

くると、


「その前にシュロランド教国には、

 殺し合いをしてもらい……


 人口を1/10まで減らして

 もらいましょう」


俺の発言に、身内教国関係なく、

全員が固まった。




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