話は少し
向かい―――
ちょうどアスタイル王国との中間に
差し掛かった時、
彼……島村は王城で、アンク王女と
「し、島村……様」
長い銀髪の王女はその顔を
「……治療中に逃げた、と聞いて
おりますが……
いったいどうしてそのような事を?」
続けて冷静を保ちながら、素知らぬ
ふりをして質問する。
すでに日は暮れており、照明用の魔導具に
照らされた彼の顔は―――
右半分が痛々しい
「とぼけるんじゃねぇ。
全部知っているんだよ。
この首から全部聞かせてもらった
からなあ」
島村は手持ちの袋からある物を取り出すと、
それを無造作に投げてアンク王女の前に
転がす。
「……ヒッ」
それはグリーク宰相の首であり―――
完全な『死』という存在に彼女は息を飲む。
「なな、なぜこのような事を。
乱心なされたのですか?」
「お前、俺の事を性欲サルだの何だの、
散々言ってくれていたらしいなあ?
それに治療も、本当は全部治せる
ところを、あえて中途半端な形に
してくれていたそうじゃねぇか」
実際のところ、彼を生かしておいたのは……
口封じと思われないためと、まだ利用価値が
あるからであった。
全ての責任を押し付けるのと同時に、
動けない状態にさえしておけば、
新たに発覚した事も島村のせいに出来る。
そのため、しゃべれない・動けない状態で
生存だけはさせておくようにと―――
アンク王女は命じていたのである。
「な、何か誤解があるようですわね。
それに、もしわらわたちが島村様に
そのような扱いをしていたとしたら……
島村様が身を隠した時点で、警戒している
はずではありませんか?」
「そうだな。
天井裏に3匹、下の部屋に4匹。
両隣りの部屋に2匹ずつ、と。
裏の人間ってのはアレだな。
自分が奇襲する事に慣れちゃいても、
される事は想定していないようだ」
すでに自分を警備する部隊は全滅したと
いう事実を告げられ―――
彼女は
「そ、それは……
ここは王城、警備するのは当然です。
とにかく、まずは話し合いを―――
あ、ベッドの中でも構いませんわよ?
久しぶりにわらわを抱きたくなったんじゃ
ありませんこと?」
王女は服をするすると脱ぎ捨て、
女の武器を利用して、何とか
脱しようと試みるが、
「いいねぇ。
けどよ、いろいろと女は抱いて来たが、
やっぱ無抵抗にした後にヤるのが一番よ。
殺して、まだ体が暖かいうちにヤるのが
特にいい。うるさくねぇしなあ」
「……っ、このクソザルがあぁああっ!!
『
焦りと激怒の感情が入り混じり―――
アンク王女は魔法を放つが、
「おっ、それが奥の手か?
あのグリークっていうオッサンも、
何か最後に使って来たけどよ。
ま、俺の『
何やったって無意味なんだけどな♪」
彼の『封印』……
相手のスキルを完全無効化するもの。
今まで散々利用して来た相手と能力が、
自分に向けられた時、アンク王女は
絶望という状況を初めて思い知る。
「や、やめ……助け……」
そして島村の復讐はなされた―――