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第105話・緊急帰国


「く……っ!

 スフィアさん、もっとスピードを

 上げられませんか!?」


「い、今ので精一杯です!

 これ以上無理をすると、この子たちが

 倒れてしまいます!」


アスタイル王国の使者から、アンク王女・

グリーク宰相の死を告げられた俺たちは、

急いでシュロランド教国を出発。


全力で、アスタイル王国へと向かっていた。


「やっぱり、島村の仕業?」


武田さんは前は『緑羊グリーン・シープ』に乗っていたが、

今は全員『風狼ウィンド・ウルフ』に乗り替えている。


「まずそう見て間違いないでしょう。


 アンク王女様とグリーク宰相を殺した、

 という事は―――

 自分がどういう役回りで動かされて

 いたか、気付いたという事でしょうね。


 そして最も恨んでいるであろう僕が

 いないとなると……

 あの『ゴミ捨て場』の街が標的になる

 可能性が―――」


一応、『ゴミ捨て場』にいる人たちには

用心するよう警告はしてあるけど、


あっさりと王国の要職と王族を殺したと

なると……


「戦わずに逃げるよう言ってあるし、

 大丈夫じゃないかな?」


「下手をしたら街が焼き払われている

 可能性はあるけど―――」


熊谷くまがやさんと白波瀬しらはせさんが、

同じ『風狼』に乗って疾走しっそうしながら、

状況を予測する。


「とにかく急ぎましょう!

 島村は僕が何とかします!!」


そして俺たちは最低限の荷物だけ持って、

アスタイル王国、その『ゴミ捨て場』の

街へと急行した。




「はぁはぁ……

 ま、街は」


そして遂に『ゴミ捨て場』の街―――

その外観が見えるくらいの距離まで到着

すると、


「火の手は見えないわね」


「いたって平穏そうですけど」


武田さんとスフィアさんが、恐る恐る

様子を伺う。


「……皆殺しにしたから静か、なんて事は

 ないだろうな」


「やめてよ、縁起でもない」


熊谷さんと白波瀬さんも、その『普通』な

感じに拍子抜けしている。


それにシュロランド教国近くで感じた

ような、血の匂いも無い。


全員無事である事を祈りつつ、俺たちは

警戒しながら街へと近付くと―――


「んっ?」


よく見ると、いつもの門番がいて、

そして門の近くの大きな木に、何かが

吊り下げられている。


その下に3人の人影が見え、こちらに

気付いたのか大きく手を振って、


「あ! 師匠!!」


雨霧あまぎり様ー!!」


「お待ちしておりましたぜ!!」


そこにいたのは、グレメン国の例の三派閥、

闘士テルム』・『魔術師マジクール』・『格闘家ルクタートル』の

リーダーたちで、


木に吊るされていたのは、島村であった。




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