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第107話・島村の最期


「いろいろとお土産まで……

 ありがとうございました!!」


「また来ますねー、雨霧あまぎり様ぁ♪」


「言われた事はちゃんと王へ

 お伝えしますぜ!!」


数日後―――

闘士テルム』・『魔術師マジクール』・『格闘家ルクタートル』の

リーダーたちは、


情報共有した事を本国・グレメン国へと

伝えに帰って行った。


こちらからの要請は、一度他の国々……

シーライド王国やシュロランド教国の

代表を集め、


ここ、アスタイル王国で一度話し合おう、

という事である。


いわばこの世界初の国際会議を行おうという

事で―――

シーライド王国・シュロランド教国にも

使者を送っている。


「雨霧君、時間だけど……

 本当にいいの?」


「うん。

 本人も言いたい事があるだろうし。


 一応、話を聞いてやらないとね。

 ま、遺言になるだろうけど」


武田さんが心配そうな顔をして、

俺に確認を取る。


そう、これから俺は島村と会うのだ。


アイツは相手のスキルを使えなくする、

封印ロック・アウェイ』という能力が

あるが、


言ってしまえばそれだけで……

当人はそれ以外の特殊な力は無く、


数人がかりで抑え込めば捕獲ほかく容易たやすい。


それであの三派閥のリーダー、

『闘士』リーダーのブレーメンさんと、

『魔術師』リーダーのイノンさん、

そして『格闘家』のニバダさんに、


スキル頼りではない戦闘訓練を経験済み

だった事もあって―――

あっさり捕らえられたのである。


そんな島村は拘束され、今は牢屋の中。


グリークとアンク王女……

この国の宰相と王族を殺したのだ。

死刑は当然だろう。


そして俺は、島村との面会のため―――

『ゴミ捨て場』の街から出発した。




「は、はぁ!?


 お、俺が火あぶりって……

 どういう事だよ!?」


「え? 火あぶりっていうのは文字通り

 生きたまま焼かれるという事で―――」


「俺が聞いているのは方法じゃねえ!!」


王城の地下、石牢に入れられていた彼に

俺が面会して刑を告げると……

島村は混乱した面持ちで聞き返して来た。


「そんなに驚く事ですかね?


 今まであなたがやって来た事を考えれば、

 妥当な刑罰でしょうに」


「じょ、冗談じゃねぇよ!!

 それならいっそ一思いに死なせろ!!


 お前、俺と同じ日本人だろ!?

 人権とかモラルとかねぇのか!?」


その問いに俺はフー、とため息をつき、


「あなたがその人権とかモラルとか

 守って来たのであれば、その言葉に

 動かされたかも知れませんけど。


 その人権やモラルを破って好き勝手

 やって来たのがあなたでしょうに。


 それでどうして自分だけそれを、

 守ってもらえると思ったんですか?」


「だ、だがよ!

 そもそもアイツらが原因だろうが!!


 俺をこんなところに連れて来なけりゃ、

 俺だって好き勝手やらなかったよ!!


 悪いのはアイツらだ!!」


そこでまた俺は、さっきよりも長く深く

ため息をつく。


「全員が全員そうなったわけでもない

 でしょうに―――


 あなたが好き好んで、選択して……

 それでこうなっただけでしょう?


 それに先ほど、同じ日本人とか

 おほざきになっておられましたけど、

 その日本人を殺さなかった、とでも?


 僕を殺そうとしたのはどちら様

 でしたっけ?」


「ぐ、ぐぐぐぅ」


鉄格子てつごうしを握り締めながら、島村は

反論の代わりにうなる。


「わかったら大人しく焼かれて苦しみながら

 焼け死んでください。

 僕は優しいので反省までは求めませんよ。

 では」


そこで俺が立ち去ろうと振り返ると、

背中から、


「てめぇ、絶対恨んでやるからなぁああ!!

 死んでも恨んでやるからなぁああ!!」


島村の絶叫に俺は振り返り、


「あの世があると思っているのなら―――


 俺を恨む前に、てめぇが殺した人たちが

 歓迎会を開いてくれるだろうよ」


そう返すと彼は絶望したような表情となり、

俺は地下牢を後にした。




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