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第109話・国際会議と密約02


俺の言葉に、各国の代表たちが

立ち上がり―――


「なっ、何を言っているのだ!?」


「正気か!?」


「話にならん!

 我々は失礼させて頂く!」


と、次々とカバンに書類を詰め出すが、


「うぐっ!?」


俺はそんな代表の1人に近付き、

顔面をわしづかみにする。


「なあ、てめぇら……

 俺たち召喚者に選択肢はあったか?


 無理やり呼び出して、帰す事もなく

 この世界のルールに従わせたんじゃ

 ねぇのか?


 てめぇらが選択肢を俺たちに

 与えなかったんだ―――

 じゃあ俺たちも選択肢を与える

 つもりはねぇよ」


それを見たステラ様が、


「……皆さま、お座りください。


 それにこの方々は、やると言ったら

 やる人たちです。


 今まで好き勝手に召喚者の方々を使った、

 その責任を取る時が来たのです」


そして熊谷くまがやさん、白波瀬しらはせさんも

彼らをにらみつける。


熊谷さんは『全武器特化ウェポンマスター』、

白波瀬さんは『全天候魔法オール・ウェザー』という、

戦闘系の中でも最高クラスのスキル持ち。


その2人ににらまれた使者たちは、

大人しく席に戻った。




「とはいえ、今の各国の人口って、

 せいぜい30万人前後なんですよね。


 これじゃあっという間に終わって

 しまいます。

 それはつまらないですから。


 今から20年、各国で人口増加のため、

 内政に専念して頂こうと思います」


俺の言葉に、即座に戦争が始まるわけでは

ないと理解し―――

彼らの顔に安堵あんどの色が浮かぶ。


「各国とも100万……

 いや、500万くらいには増えて

 欲しいかな」


「それくらいあれば戦力だけでも、

 100万単位で出せそうね」


すると使者の1人がおずおずと手を挙げて、


「そ、そんな短期間で―――

 それだけ増えるものでしょうか」


「ああ、それはご心配なく。

 各国の召喚者たちが支援しますので。


 こちらの世界の医療、衛生、食料制度を

 余すところなく伝えます!


 すでにその計画書も出来上がって

 おりますので……

 目指せ! 富国強兵です!!」


異世界の召喚者はその能力だけではなく、

知識レベルも高いというのは、各国の

共通認識でもあった。


ただ封建制が現役のこの世界では、

相容れない事も多く―――

これまで、その知識を活用しようという

動きは限定的だったのである。


だが今回のこれは強制であり命令に等しい。


もし拒否すれば、最初に滅ぼされる国家に

なるであろう予測は、使者たちの共通理解

としてあった。


「もちろん、表面上の条約は進めて

 もらいます。

 その裏で、20年後を見据えた

 世界大戦計画も。


 何か質問はございますか?」


そこで俺はステラ様に目配せする。


「あ、あの……」


「はい、何でしょうかステラ様」


熊谷さんが彼女に聞き返すと、


「そ、その戦争は―――

 各国がそれぞれ単独で行わなければ

 ならないものなのでしょうか。


 その、他国と同盟とかは」


「それはもちろん結構ですよ?

 集合離散しゅうごうりさんは世の常人の常。


 20年後に始まる愛と友情と裏切り。

 素敵だわぁ♪」


白波瀬さんがからかうように答える。


「そ、それでは……

 その同盟国、例えば二ヶ国が生き残った

 場合は?


 最後、1国になるまで殺し合わねば

 ならないのでしょうか」


その質問に召喚者組は顔を見合わせ、


「う~ん……そこまでは」


「その時はその二ヶ国は残すって事で

 いいんじゃないか?」


「あたしもそれでいいと思うわ」


そこで話は一段落し、


「では、他に質問も無いようですので

 これで……


 あ、この『再発防止プログラム』は

 密約です。

 国家の上層部だけの秘密にして

 くださいね。


 公表するのはあくまでも例の、

 差別及び待遇改善だけで―――」


俺がそう言うと、彼らはうなだれるように

席を立ち……

そこで会議は終了した。





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